IDEA

琳間学校(リンカンガッコウ)

株式会社Hibana
松田 直子
愛媛県生まれ。学生時代に熱帯林問題から、日本の森林に関心を持ち、環境・まちづくりの仕事を経て、NPO活動(くくKYOTO)から、2006年に株式会社Hibanaを設立。森の魅力を伝え、火と木のある暮らしを提案し、地域の資源を地域で利用する、持続可能な社会づくりを目指している。2009年より京都市役所近く寺町二条下ルで「京都ペレット町家ヒノコ」を運営、林業女子会@京都や田舎生活研究所・京都などの活動拠点となる。今後は、森を舞台にエコツアーや体験を仕事にできたらと思い、模索中(いろんなところをウロウロしています)。

──現在考えられているビジネスとその目的はどのようなものでしょうか?

琳間学校は、幅広い経験をもった専門家と学ぶことで、参加した大人たちが心身のレジリエンス(七転び八起きの力)や生きるための技術を身につける学び場です。実際の学校のように国語、理科などの科目を、新たな視座を持って学ぶことができる、いわば森のリベラルアーツのような存在を目指しています。

 

──具体的な事業としてはどのようなことを計画されているのでしょうか?

コロナ渦になるまでは、農林業の職業体験や環境・エネルギーをテーマにしたバイオマスツアーなどを行ってきました。昨春より、森や木育で活動をしてきたメンバーと親子向けの団体を立ち上げ、地域にある身近な森や山を訪れる機会を増やし、森を歩き(野掛け)、森のパワーをいただく機会(森林浴)をつくりました。また、生き物の秘密発見イベント、樹木探検など自然と仲良くなるワンダーな体験を通して、森への入り口を広げる活動を多数行ってきました。

もちろん子ども向けの活動は楽しいのですが、大人の方こそ里山の人たちを教科書に見立て、森を教室にして、時には自分たちでプログラムも考えながら、生きるチカラを身につけるべきだと気づき、今回のビジネスアイデアにたどり着きました。

 

──ビジネスアイデアの特徴を3つ上げるとしたら、どんなところでしょうか?

一つ目は、企業研修や自己鍛錬の場です。森は命の集合体であり、多様な生態系を形成しています。複雑な現代社会の課題を解くために、身近な自然に学び、森の中で「人とのつながりや関係性を問い直す」ことの重要性を感じてきました。しかし、既存の自然学校は子どもを対象としたり、コア層に対するプログラムが多かったり、大人向けの場はとても限られています。そのため企業研修をはじめ、自然体験や学びもてなす場を通じて、社会人ひとり一人が森や地域に新しい価値を創造していく学校でありたいと思っています。

二つ目は、Withコロナ時代に新しい生きかた探しをする場です。私たちと自然との関わり、暮らしの営み、仕事のあり方など人生を見つめるには、建物の中より森に身をおくことで学べることは多くあります。自宅や建物内でストレスを感じる方には特に、森は密にならず安心して訪れることができ、体や心が健康になるセラピーとしても有効性(エビデンスも多数)があります。人を超えた森そのものの力を活かし、自然と私たちが共存する未来や生き方について、Withコロナ時代の今だからこそ森好きなスペシャリストと一緒に探していきましょう。

三つ目は、身近な森林の関わりと仕事づくりです。京都市全域の74%(全国でも約7割)を占める森林のほとんどが手入れをされず、関心を持たれることもないまま、荒れ放題なのが現状です。しかし裏を返せば、誰もが携われる可能性に溢れた場所が森林です。林業や燃料をはじめとする資源利活用以外の産業でも、森そのものの価値を活かし、産業(ビジネス)を通して、森に継続的に関われる仕組みを作ります。具体的には環境教育の仕事や人と森をつなげるコーディネーターの育成も想定しています。

 

──なぜこのビジネスアイデアを実現したいと思うようになったのでしょうか?

社会や大人の背中を見て子どもたちは育ちます。心身のレジリエンスが高い状態を誇らしいと思える子どもたちに育ってほしい…そのためには、生きる技術を身につけた逞しい大人を増やさなければ!と考えました。自分の子どもが大きくなった時は、環境やウィルス問題に限らず、今よりももっと大きな危機があるかもしれない。私たちの時代より、はるかに厳しい時代を生きることが想定される未来に向けて、今わたしたち大人ができることは何だろうと。

これまで様々な組織を通して森や自然に携わってきた経験から、思いを巡らせた結果として「既存の枠組みや価値観に縛られることなく、自由な発想で生きる大人の姿をたくさん見せていくこと」が、里山にも子どもたちの未来にも良いと気づくことができました。私自身もそのような大人に育ててもらいました。

 

──なぜこのビジネスが今必要だと考えているのですか?

かつて京都市内の学校で、林間学校がはじまったのは1915年から。子どもの体力づくりを目的に、結核などの感染症対策がきっかけとなり、蜜を避けるため、当時は校庭に机を並べて授業が行われました。南禅寺や糺の森で授業があり、宝さがしや森での読書も林間学校と呼ばれていました。現代の子どもや大人たちは、当時よりもっと体力が落ちているはず。コロナ下の社会情勢も重なるところが多くあり、今こそ新しい「リンカンガッコウ」が必要だと感じています。

密を避けつつ、考え方そのものをドラステックに転換し、再び学校という形態をとりながら人が集まれる仕組みを再検討しています。特に大人たちが自然の中で学ぶ時間を通して、心身の健康と向き合い、自分を見つめ直す時間をとり、ストレスを乗り切る力が必要な時代だと考えています。

 

──アクセラレータープログラムに参加した時点での課題意識と、参加した上での成果はどのようなものだったでしょうか?

新しいことにチャレンジする不安、進むことへの迷い、日々の仕事の合間に考えることの苦しさはたくさんありました。現状維持することが精一杯で、空回りしている状況だった私も、コーディネーターやメンターに話しをしていく中で、随分と励まされました。まだ言語化には至ってない部分はありますが、徐々に考えも整理されていきましたね。賛同いただける方や協力者も増えつつあり、まずは決意表明として、実施概要をWEBサイトやパンフレットにまとめようと準備しています。

 

──ビジネスアイデアの実現に向けて、これからの展望をお聞かせください。

2年前に岡山県の真庭をモデルに、バイオマスツアーを企画しました。森林環境をテーマにしたバイオマスの新事業にチャレンジしようと試みたのです。しかし本プログラムの開始時点では、コロナで集まれない状況が続き、既存ツアーの枠組みや過去のビジネスの延長線上にあるモデルでは、そもそも集客が厳しくなりました。

そこで、もっと本質的な問題に向き合いたいと思い、2021年夏から「琳間学校」を実施するため、事業構想を立て直すべく動き始めています。1DAYや2DAYから参加できる短期コース、半年かけて通う中期コース、さらには長期間に渡る企業研修など含め、様々な学校の形を整えていこうと意気込んでいます。ぜひともに学びの場を創造いただける方、森のフィールドを提供していただける方、モニターとしての協力、広めていく広報の支援など、サポートをお願いします。

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