IDEA

「スポゼロ」

一般社団法人ドーピング0会 代表理事
吉田 哲朗
薬剤師でアンチドーピングの専門家、スポーツファーマシスト。スポーツ選手が市販の風邪薬や、サプリメントを摂取し「うっかり」ドーピングに...資格停止処分になり、選手生命が終わってしまう。そうならないよう未然に選手、チーム、指導者、協会など過去4,000名を超える方々へ適切な知識を伝え、Jリーグや実業団チームなどトップチームからの相談も受け付ける。運営中のオンラインコミュニティには10を超える専門職、総勢200名が集い、2020年に一般社団法人化して絶賛活動中。

──現在考えられているビジネスとその目的はどのようなものでしょうか?

ビジネスのタイトルは「スポゼロ」。キャッチフレーズはスポーツ医療の知識を学び、メンバー同士が交流できるオンラインコミュニティです。スポーツに関わるリスクを0(ゼロ)にすることでアスリートやご家族、スポーツ指導者等の不安を取り除きます。そして、スポーツ界の安全と安心、笑顔を守り、スポーツに関わる全ての人の居場所を創ります。

 

──具体的な事業としてはどのようなことを計画されているのでしょうか?

スポーツにはアクシデントがつきもの。だからこそ、ご家族から「子どもが怪我をしたとき、どうすればよいのかわからない」という声や、指導者が「専門外の質問を受け、誰に相談すればよいかわからない」など、スポーツに関する様々なリスクや不安を解消できるような仕組みを構築したり、専門家がネットワークを通して知識提供したりすることにより、笑顔でアスリートの背中を押せるようお手伝いします。

 

──ビジネスアイデアの特徴を3つ上げるとしたら、どんなところでしょうか?

1つ目は、スポゼロ資格の構築と運営
スポゼロマネージャー、スポゼロサポーターという資格を生み出します。マネージャーはスポーツの指導者向けの資格、サポーターはアスリートのご家族向けの資格です。スポゼロのオンラインセミナーで学び、試験を受けて合格した方に資格を授与します。スポゼロ資格を持った方同志が集い、知識をアップデートする場も創ります。

2つ目は、スポゼロお悩み相談室
スポーツドクターを始めとするスポーツ医療関係者や、スポーツに詳しい弁護士などの専門家がコミュニティ内にいることが私たちの強みです。一人では解決できないお悩みにも、最適な専門家をピックアップし、解決に導くオンラインサービスを考案中。場合によってはプロジェクトチームを組み、領域を横断しながら共に課題や相談に取り組む事例も出てくると考えております。

3つ目は、スポーツ医療関係者のオンライン交流拠点
医療従事者は常に知識をアップデートする必要がある一方で、なかなか他職種との接点は少なく視野が狭まってしまいがちです。そこで、専門家が学べる場としてのオンラインコミュニティを構築します。多種多様な観点をもつ多くのスポーツ医療関係者が集い、成長できる場を提供します。

 

──なぜこのビジネスアイデアを実現したいと思うようになったのでしょうか?

10を超える職種のスポーツ医療関係者と活動した結果、スポーツの問題は複雑である一方で、多職種が一緒に問題に取り組むことで解決できる可能性に気づきました。なぜなら、専門種ごとに様々な解決方法があり、できることが異なるからです。

例えば、貧血という課題に対して、医師は血液データからの診断、薬剤師は鉄剤の適正使用、栄養士は栄養不足のフォロー、臨床心理士はメンタル面から解決できる。連携することにより選手の最適な答えを導けると分かったと同時に、日本のスポーツ医療界は専門家が孤軍奮闘し、悩んでいる方々のニーズには対応しきれていない現状を目の当たりにしました。だから、専門家どうしのネットワークを構築し、知識提供の場を創ることがスポーツ界にとって重要だと考えるようになり、点ではなく線、そしてネットワークを創りたいと思うようになりました。

 

──なぜこのビジネスが今必要だと考えているのですか?

現在、日本は世界に先駆けて超高齢社会となり、医療費は年々増加しています。その流れに拍車をかけているのが、昨今のコロナウィルスの感染拡大です。コロナによって人々は巣ごもりになり、心と身体に不調をきたしている方が増えています。人間は会話で群れを形成し、進化してきた動物です。「コミュニケーション」がなくなり、「動かなくなった」私たち人間が不調をきたすのは、これまでの進化の歴史を考えると当然だと私は考えています。

 私がやりたいことは、スポーツ振興による運動への参加ハードルを下げること。そして、医療費の削減、そして、健康寿命の延伸です。スポーツは自然と会話が生まれ、運動もできる、日本の医療問題を解決できる素晴らしい解決策です。一人の医療従事者として、スポーツの持つ可能性を追及していきたいと考えています。

 

──アクセラレータープログラムに参加した時点での課題意識と、参加した上での成果はどのようなものだったでしょうか?

スポーツ医療関係者の多職種連携はスポーツ界を変える可能性があると感じています。これまでは関係者同士の繋がりや勉強会が中心で、いわば身内での活動しかしてきませんでしたが、これを外部に対して発信してみたいと考えていました。どう広げていけばよいのか、悩んでいるときにアクセラレータプログラムに出会いました。

 スポーツに横たわる課題の多くは、一分野の専門家だけで解決できない複雑かつ大きな問題だからこそ、多職種連携の価値を改めて認識させていただきました。自分の想像をはるかに超える成果がたくさん起こっています。

また団体のブランディングに対して、これまでの自分に無かった観点からの意見をいただき、自分の発想の幅が広がり、これから目指す世界が見えてきた感覚がありました。そして「あとはやるだけ。」という感覚を持てたことがありがたく、唯一無二な時間だったと振り返って思います。

 

──ビジネスアイデアの実現に向けて、これからの展望をお聞かせください。

スポーツ界を医療から変えるムーブメントを起こしたい。そして業界に貢献するために、私たち専門家の知識をどうやって拡げていくと良いのか、メンタリングによってクリアになってきたようで嬉しいです。

 例えば、オリンピックを目標に対外的な活動を増やしてく。それら収益事業で利益を上げつつ、社会貢献活動を行っていく。同時に、スポーツのリスクを0にする活動を支援していくことで、団体として「スポゼロ」のブランドを拡げていこうと考えるようになりました。

 所属する専門家は、知識提供を通じて成長し、自らの専門性を活かしていく。アスリートのご家族やスポーツに関わる方々は、知識を得ることで不安がなくなり、皆さんが自分の役割に集中できる。そうすることで、アスリートが競技に集中できる環境をみんなで整える。それができればスポーツの価値を高められ、スポーツがもっと面白く、熱くなる。

点をつなぎ、線を描くことで『スポーツ・セーフティ・ネットワーク(網)』を構築したい。「ああ、スポゼロね。面白いことをしているよね!」と言われたい。その先に、スポーツ界を医療から変えるムーブメントを起こしたい、そう考えています。

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