IDEA

京の番頭的『右腕』人材養成PJ

京都再生ネットワーク会議事務局 京都信用保証協会 企業支援部担当副部長
糠谷 幸裕
中小企業金融の支援機関にて中小企業の事業再生を担当。金融機関や弁護士、会計士、コンサルタントなどと連携して事業の再建をサポートしている。今回は支援機関の副部長という立場ではなく、一個人として志ある仲間を集め、コミュニティを築き、事業化したいと考え応募した。当プログラム参加後、アイデアを社内で共有したところ、企業支援部の新事業の企画として採用され、現在事業立ち上げに向けて準備中。

──現在考えられているビジネスとその目的はどのようなものでしょうか?

ビジネスのタイトルは「京の番頭的『右腕』人材養成PJ」。キャッチフレーズは「京都再生ネットワーク会議✕KOIN」です。

来る大廃業時代や地域の社会問題を憂いながらも、意欲と志のある人材を集め、中小企業の経営中核人材の担い手を育成するプロジェクトです。現役のプロ経営者を招聘し、経営者への「寄添い力」や中小企業の戦略の立て方を習得する研修を実施。人材と企業のマッチングを行い、マッチング後のフォローまで行います。

 

──ビジネスアイデアの特徴を3つ上げるとしたら、どんなところでしょうか?

1つ目は、AI時代に負けない人材を育てること
AIには人の育成はできない。そして、また人の育成は人にしかできず、プロの育成はプロにしかできません。当該事業では、単身で企業の内部に入り、自分の培ってきた能力やネットワークを最大限に駆使して数々の企業の課題解決をしてきた、第一線で活躍するプロ経営者を講師として招聘します。プロ経営者の熱量を肌で感じ、中小企業の限られたリソース(人・モノ・金・情報)の中での闘い方を学んでいきます。

2つ目は、京都経済センターでの開催
講座開催場所である京都経済センターには、様々な中小企業支援機関や経済団体が集積し、近隣には地域金融機関本部があります。番頭的「右腕」人材育成と活用をテーマに、各機関の蓄積したノウハウやネットワークを可視化できれば、研修を修了した人材がマッチング先でミッションを遂行する際、外部資源とのアクセスが迅速にでき、きめ細かいサービスが受けられるなど強力な武器となるでしょう。

3つ目は、地元中小企業支援ネットワークによるバックアップ

京都では、「京都再生ネットワーク会議」のように行政、地元金融機関、京都府中小企業再生支援協議会が、地域一丸で中小企業を支える仕組みがあり、当該プロジェクトはこれを基盤にしたいと考えています。また首都圏人材の地方への移転と還流を目的とした、地方創生のための国の機関である㈱日本人材機構との連携も予定しています。

 

──なぜこのビジネスアイデアを実現したいと思うようになったのでしょうか?

『私の言っていることがもし間違っていたら、明日にでも、「ダメだ!」と必死で止めてください…』これは400年続く某老舗企業の社長が常日頃から社員に言う言葉です。老舗には社長を堅実に支える番頭の存在があります。他方で、企業が傾きかけた時は、我々は金融機関、専門家とタッグを組み、医者が患者を診るよう最善をつくします。しかし、その後の回復力は企業自身に任せる他ありません。伴走支援にも限界はあり、社長には内からの助けが必要だと感じています。

 

──なぜこのビジネスが今必要だと考えているのですか?

経営者の仕事は「決断」です。決断には常に不安が伴います。中小企業の社長は大企業に比べ、不完全で不充分なリソースの中で、どこで、何を、どのようにを決める市場選択と、前進するか、守るか、根を張るか、継続するかを決める市場行動を多岐に渡って決断しなければならないのです。もし社長のメンターやコーチ、内部の合意形成を行うファシリテーター、外部資源アクセスを組織化できるオーガナイザーの役割を果たせる人材が社内にいれば、決断を遅らせる企業を減らすことができるのではないでしょうか。

 

──アクセラレータープログラムに参加した時点での課題意識と、参加した上での成果はどのようなものだったでしょうか?

同じ業界の人同士であれば、潜在的なニーズを共有しやすいですが、一般の人へどのようにアピールすればよいか、表現方法などをご指導いただきました。なるべくイメージしやすいエピソードを交えて説明するよう改善することができました。

 

──ビジネスアイデアの実現に向けて、これからの展望をお聞かせください。

この事業は、地元で番頭的「右腕」人材を養成し、人材と企業のマッチングを行う人材バンクまで発展させたいと考えています。派遣された人材が一つの会社でのミッションを終えた後は、その会社に幹部として責務を継続するのも良いし、他のマッチング先を探すのもよいでしょう。また、優秀な人材を複数の会社でシェアするような形もありえます。経営者の決断に寄り添える右腕人材を地域で循環できる仕組みを構築していきたいです。そうすればきっと、企業が廃業することなく、次世代へ繋ぐ一端を担えるはずだと信じています。

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