介護現場の見取り図 by TOMIE
──現在考えられているビジネスとその目的はどのようなものでしょうか?
ビジネスのタイトルは「介護現場の見取り図 by TOMIE」。キャッチフレーズは「可視化で現場をお手伝い」です。
「介護現場の見取り図」は、To Make It Easy(介護をもっと、簡単に。)を理念とするプロジェクト「TOMIE」の第一弾事業です。介護現場ごとに存在する仕組みやルールを可視化したマニュアルの作成・運用を支援することで、現場に入った新人職員と新人を受け入れる既存職員双方の負担を軽減します。
──具体的な事業としてはどのようなことを計画されているのでしょうか?
介護現場で働く方々の「新人に丁寧に教えてあげたいけれど、自分の仕事で手一杯でなかなか教えられない」「先輩に質問したいけれど、忙しそうでなかなか聞けない」など、新人と先輩の時間不足に対して、現場ごとに存在する仕組みやルールを可視化したマニュアルによる教育の効率化をご提案します。現役の介護職である私が現場取材に入り、マニュアル作成だけでなく、運用定着まで支援します。
──ビジネスアイデアの特徴を3つ上げるとしたら、どんなところでしょうか?
1つ目は、事業所ごと、部署ごとの丁寧な取材。
介護事業所ごと、また同じ介護事業所内の部署ごとに丁寧に取材を行い、それぞれの実状に合わせたマニュアルを作成します。
2つ目は、作って終わりではない「介護現場の見取り図」。
マニュアルを作ったら納品して終わり、ではありません。事業所で働く方々にマニュアルを運用していただけるよう、導入のガイダンスや運用状況のヒアリング、内容更新など、定着するまで伴走し続けます。
3つ目は、現役の介護職員が取材。
サポートを担うのは、現役の介護職員です。取材方法からマニュアルの作成に至るまで、「今、この時代の介護現場」の目線を持った人間が、介護現場で働く方々のためにサポートを行います。
──なぜこのビジネスアイデアを実現したいと思うようになったのでしょうか?
介護の現場に身を置いてきた中で実感していることの一つに人手不足があります。目まぐるしい現場に追いつけず離れていってしまった新人や、新人を大切に育てられず苦悩する先輩方を見てきました。もちろん、私も新人として、そして新人を受け入れる職員として、双方の負担を感じてきました。そのような経験から「人手不足の解消には人手の増員だけでなく、人手の加入時にかかる双方の負担軽減も必要だ。そしてそれは、人手不足に悩む現場に任せきりでは状況は変わらない」と思い、そのためにできるアイデアを考えるようになりました。
──なぜこのビジネスが今必要だと考えているのですか?
介護を必要とする人の数はこれからも増え、それを支える介護職員がすでに不足していることは、多くの人もご存知でしょう。京都では「きょうと福祉人材育成認証制度」などを活用し、人材の採用・育成に向けた取り組みが各所で行われています。その中には新入職員を大切に育てるための取り組みは数多くあるものの、新人育成の負担を軽減するアイデアはそう多くはありません。介護現場マニュアルサポートは、新人を育てていこうという思いを持ちながらも忙しく働く方々の負担を軽減する一つの選択肢になると思っています。
──アクセラレータープログラムに参加した時点での課題意識と、参加した上での成果はどのようなものだったでしょうか?
本プログラムの開始前から、マニュアルサポートを行うべく、介護職員の皆様へのアンケート調査やWEBサイトの構築、広報を行い、「あとは最初の一件をやってみないと分からない」という課題意識を持っていました。本プログラムの中ですぐには答えられない問いかけもたくさんいただき、答えを作り上げていく具体的な作業が必要でした。おかげで、サービス内容の細かな設計やありたい姿が見えてきましたし、最初の一件を得る前にまだできることや最初の一件に出会うためのプロセスなどについて検討することができました。
──ビジネスアイデアの実現に向けて、これからの展望をお聞かせください。
今TOMIEと「介護現場の見取り図」に必要なのは、取材と発信の枠組みだと捉えています。介護現場に携わる人たちの課題意識、課題への取り組みなどを取材・発信することがTOMIEの認知向上、「介護現場の見取り図」の質の向上と有用性の訴求につながると思っています。「介護にまつわるむずかしさ研究所(仮)」というポータルサイトを作り、「介護にまつわるむずかしさ」そのものを研究・取材の題材に「どんなところがむずかしいのだろう?」「なぜ、むずかしいのだろう?」と問いを重ねるとともに、情報を発信していきたいと考えています。そこで得られた知見を、TOMIEや「介護現場の見取り図」、ひいては介護現場で働く人たちに還元していきたいです。