IDEA

“片野坂亮”というアイデア

Office Kabochi 代表
片野坂 亮
1987年、福岡県生まれ。成安造形大学の映像クラスを専攻し、学生の頃から、映像制作の現場に携わる。卒業後は京都を拠点にフリーランスの映像作家として活動を開始。企業のプロモーション動画、テレビCM、アニメーションなど多岐にわたる仕事を経て、2015年に映画事務所Office Kabochiを設立。集大成として長編映画「たびのやまびこ」を制作し、脚本、監督、編集を務める。現在は上映会などのイベントプロデュースも行いながら、ジャンルにとらわれることなく、様々な表現活動を行なっている。

──現在考えられているアイデアとその目的はどのようなものでしょうか?

タイトルは「“片野坂亮”というアイデア」、キャッチフレーズは「クリエィティブのチカラを社会に活かす方法」です。

「“片野坂亮”というアイデア」は、自身の映像制作にまつわる様々なスキルを社会に活かすことで、表現を通し、誰かの・地域の・組織などの課題やニーズを叶えていく取り組みをイメージして付けました。

 

──具体的にはどのようなことを計画されているのでしょうか?

僕は自分の中の可能性に、常にチャレンジしています。「観る人の心を動かす映画を撮りたい!」と思い、自身のチームを編成。2年の歳月をかけて長編映画を制作しました。現在は、初のアニメーション作品に挑戦中です。将来的には、夢を追っている仲間や、世界中のクリエーターと繋がり、次世代の夢になることが目標です。今後、クリエーターに求められるのは、さまざまな垣根を超えて共創を生み出すことだと思います。今の時代は、いつでも・どこでも・誰とでも作品が創れるようになり、クリエイターもダイレクトに社会の反応を感じることが出来るようになりました。僕は、クリエイターの枠だけで閉じることなく、情熱を持った人たちとの出会いの中で、Office Kabochiのエキスパートチームを作りたいです。

 

──アイデアの特徴を3つ上げるとしたら、どんなところでしょうか?

1つ目は、人や土地の記憶を紡ぎ出すこと。クリエーターは、作品を通して、後世に記憶を残すことができます。それは、目に見えない想いをカタチにする仕事です。昨年、信楽焼で有名な滋賀県の多羅尾地区にある古民家で行った、自身の長編映画の上映会と並行して、多羅尾の歴史や伝承をもとに描いたイラスト展示会を開催。地域内外からたくさんの方が訪れてくださいました。そこで出会った、昔からその土地に住むおじいさんとおばあさんから聞いた、多羅尾で起こった悲しいお話をもとに、ある物語を描くことにしました。現在は、展示会の原画をベースに、その物語をアニメーション化している真っ最中です。

2つ目は、映画的な感覚で表現に落とし込むこと。人の中にある映画的な感覚といいますか、僕は人間も社会も“間合い”が大事だと思っています。人の心の中にあるものを引き出す技術が映画作家にはあります。映画化するということは、誰かの想いや記憶を生きた証としてカタチにすることです。登場人物に反映させるも良し。物語のテーマとして、社会の声を表現に落とし込むも良し。僕自身、人や社会に寄り沿う映画作家でいたいから、耳を傾けることは常に意識しています。

3つ目は、コミュニティの垣根を越えて発信すること。Office Kabochiでは、積極的に自己の感性には無いものを取り入れ、作品に深みを出すことを追及しています。これからの時代は、各自・各組織・各地域との繋がりが重要となり、クリエーターに求められるのは、モノづくりのプロセスを介して、様々な感性と触れ合う場を生み出すことです。多羅尾で行った上映会では、既存のコミュニティの枠を越えて発信することで、閉じることなく開かれた交流が生まれました。クリエーターには、人の心を惹きつけるチカラがあると僕は信じています。そのチカラを最大限に活かし、多種多様な人々とモノづくりをしていきたいです。

 

──なぜこのアイデアが今必要だと考えているのですか?

滋賀県の多羅尾で、僕が出会ったおじいさんとおばあさんから「昭和28年の大きな水害」のお話を聞きました。沢山の家が流され、多くの方が亡くなりました。しかし、現在の多羅尾では少子高齢化が進んでおり、水害の歴史を知らない人が増えています。山間の自然豊かな地域に何度も通う中で、作家として「忘れ去られていく多羅尾の歴史を、後世の人々にも伝えなければならない」と直感しました。「目の前で家が流されていく中、人々はどんな気持ちで逃げたのだろう?」「当時はどのような生活だったのだろう?」など、いろいろな考えを巡らせながら、取材と構想を重ねているところです。プログラム期間中に、作品の1分程のパイロットフィルムを創りました。

 

──アクセラレータープログラムに参加した時点での課題意識と、参加した上での成果はどのようなものだったでしょうか?

とにかく人のご縁が増えましたね!昨年末は西陣サロンのイベントに参加することができ、そのご縁で、後日、ローカルラジオにも出演し、制作中の作品や自身の活動について、より多くの人に向けてお話しさせていただきました。どうやら堀川商店街に僕の声がこだましたらしいです。また、アニメーションにこだわることなく、絵本というツールから始めてみることも選択肢にあるなど、見識を広げることができました。それも、ビジネスに携わっているアクセラのメンターの方々と話していて、自分の視野を広げていただいたおかげです。クリエーターの地域社会との関わりにも可能性を感じています。僕の考え方や想いに共感してくれる人がいて、お話する機会をもらえたことそのものが「片野坂亮というアイデア」を後押ししてもらった気がします。自分が意識した方向性が間違いではなかったと再認識できました。

 

──アイデアの実現に向けて、これからの展望をお聞かせください。

まずは多羅尾をテーマにした物語「らお」という作品を全力で制作します。コミュニティの枠を越え、映像に限らず、絵本や展覧会などを通して、生きることに触れるような、映画そのものを体感できる機会を創っていきたいです。

「大人になったから夢をあきらめる。お金が無いからできない。夢を語り合える場がない。」夢を追いかけられない言い訳を探している人が、たくさんいると思います。そんな世の中で、僕は、人々や地域社会に勇気や希望を与えられる存在でありたいです。

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