IDEA

自分の世界を啓(ひらく)プログラム

京都府立大学
須崎 啓人
就活を経験し、自分のこれまでの人生を振り返ったときに、学生生活の中でも「型にはまった」人生を歩んできたと気づいたことがキッカケです。大学生活はアルバイトや部活・サークルをしながら、大学で勉強する、そしてその後は大学院へ行くか就活をする。そんな「モデル人生」ではなく、自分がオリジナルな幸せの軸を持って、やりたいことを基準として行動していく。そんな行動ができる人が世の中に増えていけば、間違いなくワクワクする社会になって、日本が盛り上がってくると考えて、まずは高校生から広めていくために「自分の世界を啓(ひらく)プログラム」を進めております。

──現在考えられているアイデアとその目的はどのようなものでしょうか?

ビジネスのタイトルは「自分の世界を啓(ひらく)プログラム」。キャッチフレーズは「 私の『ホンネ』を写す鏡となる」です。日頃から授業や試験に取り組んでいる高校生にとって、自らの考えや価値観という「ホンネ」と向き合う機会は多くはありません。「自分の世界を啓プログラム」は、高校生とその保護者、そして主催するメンバーも同じ目線に立って参加し、自分の内面と向き合うワークを共に体験し、「ホントはこれがやりたい」といった「ホンネ」を発掘して、その夢に臨む想い、アクションを応援するプロジェクトです。

 

──具体的にはどのようなことを計画されているのでしょうか?

普段の学校生活の中で、「やりたいことが決まらないが、このままでいいのか」、「興味はあるが、その道へ進むことが自分のためになるのか」という将来への違和感や息苦しさを感じている高校生に対して、自分の軸で生きていくことの重要性を体感している大人との対話を、ワークという形で提供し、正解のない道を一緒に考えていくプログラムです

 

──アイデアの特徴を3つ上げるとしたら、どんなところでしょうか?

1つ目は、「自分と向き合うための対話です。
「正しいこと」を教えるのではなく、「自分にとってのベスト」に気付けるようなワークとして、日々の行動を振り返るワークや、小中学生の頃にどんな興味を持っていたのかを掘り出すことで、参加者が気付かぬうちに自身の内面と向き合える点が特徴です。

2つ目は、「安心・安全な環境設定です。
周囲の目線を気にする高校生に対して、心理的な障壁を低くする工夫として、場の環境に注意を払い、音、色、匂い、景色、服装、話し方、アイスブレイクなどに強くこだわってプログラムを設計しています。

3つ目は、「様々な大人の目線です。
「自分の軸を持つ」ということが、人生のいかなるステージにおいても求められていることを体験してきた大人が、高校生と対話することが特徴です。自分の軸を持っている時とそうでない時を比較し、どのような違いが生じてくるのかを伝えることができ、高校生や保護者の方に、自分軸を持つ意味を真に理解する機会を提供します。

 

──なぜこのビジネスアイデアを実現したいと思うようになったのでしょうか?

私はこれまでの学生生活の中で、自分で決断して行動してきたつもりでしたが、自分の進路ややりたいことと向き合った時に、気付かないうちに様々な枠にとらわれて生きてきたのだと気付きはじめました。周囲に目を向けると、とりあえず就職活動したり、とりあえず大学院進学するなど、流されている人も多く、枠から外れて本当にやりたいことを目指せる人こそが独自の流れを創り出し、社会の変化に対応し活躍していけると思いました。そのためには少しでもやりたいという気持ちがある人に対して、そのような力を養う場を提供する必要があると考え始めたことがきっかけです。

 

──なぜこのアイデアが今必要だと考えているのですか?

現在、世の中がすごいスピードで変化しており、日本の世界における経済成長力も衰退しつつあります。さらに少子高齢化の問題も深刻化しています。教育においては、今の多様性の世の中で求められる力として、「自分の人生をオリジナルの基準・視点から設計する力」を養うことができるように教育システムを柔軟に変えていくことが求められています。社会の発展には技術的、経済的発展と心理的、精神的な発展のバランスが重要となってきますが、既存のシステムでは学力重視かつ暗記偏重型の教育が多く、自分の価値観や幸福の軸を見つけ、それに向かって進むという力が心(頭)の面でも、行動の面でも先進的であるとは言い難い状況が課題となっています。

本プログラムは、自分の軸ややってみたいという心の願いを見つけるという意味でも、心理的・精神的豊かさを取り戻す、教育の第一歩になると考えています

 

──アクセラレータープログラムに参加した時点での課題意識と、参加した上での成果はどのようなものだったでしょうか?

本プログラム開始時点においては、アイデアについての大枠がぼんやりと見えていた程度であり、ターゲットやその課題、そしてどんな解決策を提供できるのかについて細かく定義する必要があると感じており、全てにおいて解像度の粗さが際立っていました。本プログラムが進むにつれて、まずは私がやろうとしていることについて、本当にやりたいと思える部分はどこなのかということをメンターの方が対話を通じてうまく引き出していただいたことが大きな一歩となり、キャリア教育と言えるようなテーマで、これから先に求められ、今足りていない教育として考えられる、型にハマっている人や、自分の価値観や基準を持って行動できていない人が多いという危機感に対する解決策が必要だという方針を得ることができました。さらに、その背景となる少子高齢化や既存の教育システムにおける過不足を補うアクションなどの社会的な意義を考えることもできるようになりました。

 

──アイデアの実現に向けて、これからの展望をお聞かせください。

プログラム自体の構想は、完成させることができたので、実践を重ねて、アップデートを繰り返しながら進化させていく段階であると考えています。高校生の心理的安全性の確保と、その保護者に本プログラムの趣旨を理解していただくこと、そして、未来の日本を担う子供の教育をともに考える立場として協力していく体制を築くことを達成することが必要です。

そこで、まずは3、4人の高校生でプログラムを行い、次に10人に増やし、その次には保護者の方も巻き込み、親子として子供の未来と日本の未来を考えていくようなプログラムに成長させていきたいと考えています。そのためにも、教育関係者のみならず、本プログラムの理念に共感していただける様々な方のご意見や、こんなことを加えるともっと有意義になる、などのアドバイスも頂けると大変参考になります。

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