IDEA

ALBUM

irodori
小島 拓也
大学卒業後、東京の上場企業(不動産会社)に就職。その後、NPOや社会福祉法人、IT企業などを経て、2017年に就労困難者の雇用創出を行うため、「irodori」を立ち上げる。「働きたくても 働けない人に 働ける環境を」というコンセプトで、一般就労が難しい障害者や難病のある方を30名雇用し、ネットショップで雑貨販売を行うなどの就労支援をしている。

──現在考えられているビジネスとその目的はどのようなものでしょうか?

ビジネスのタイトルは「ALBUM」。キャッチフレーズは「I’m OK. You’re OK.」です。

ALBUMは、一般企業で働くことが難しい「就労困難者」(障害者や難病のある方など)に、労働者としての権利や賃金を保障し、かつ多様な働き方を提供するサービスです。

 

──具体的な事業としてはどのようなことを計画されているのでしょうか?

就労意欲はあるけれど、企業側に障害や病気に対する理解がなく、採用に至らない。就職できたものの、業務スキルのミスマッチや社内の人間関係などが原因で退職・転職を繰り返してしまう。そんな人たちに対し、その不安や悩みに伴走する職員を配置することで、就労支援及び生活支援を提供します。心理的に安心や安全を感じることができるので、就労が安定します。そして、就労しながら知識や技能を獲得しキャリアを積むことで、「働く喜び」と「自信」が持てるようになると考えています。

 

──ビジネスアイデアの特徴を3つ上げるとしたら、どんなところでしょうか?

1つ目は、多様な人材の雇用が可能であること。福祉施策と労働施策にまたがる「就労継続支援A型事業」を活用することで、障害者や難病のある人など、就労困難者の雇用創出ができるようになります。また、障害や病気はなくとも、朝の通勤が苦手、体調の波に変動がある、育児や介護などでフルタイム就労が困難であるなど、環境的な悩みを抱えている人の生活にも配慮できるため、多様な人のニーズに合わせた働き方が提供できます。

2つ目は、仕事があるから雇用するのではなく、雇用してから仕事を創るということ。仕事を用意してから雇用するとなると、どうしても業務が画一的になりがちです。そのため、一定の業務は確保しながらも、基本的には雇用してから、本人の「やりたいこと」や「好きなこと」をヒアリングし、本人の「強み」に焦点を当て、そこから仕事を創り出していきます。それにより、本人のモチベーション維持・向上や能力発揮に繋がり、結果として会社の生産性向上にも繋がります。

3つ目は、「正しさ」から「優しさ」そして「ありがとう」。今までの社会常識や自身の経験、価値観や倫理観に即して、物事や人の善悪を決めるのではなく、それをベースにしながらも、人に合わせて伝え方と伝わり方を意識し、伝え方に優しさを添えていく。その結果、社内に人を包み込む優しさや温かさ、そして、ありがとうの感謝の気持ちが溢れてきます。それが、社員一人ひとりの個性を大切にする社風・文化となり、心地よい空間となっています。そんな空気感があるからこそ、今まで仕事が続かなかった人が続いているのではないかと考えています。

 

──なぜこのビジネスアイデアを実現したいと思うようになったのでしょうか?

現在の社会常識や既存のルールの中では、自身の能力を発揮する機会を得られず、埋もれてしまう人たちがいます。2015年に生活困窮者自立支援法が施行される中で、私は生活自立相談事業を担当していました。月に約60件もの相談を市民から受ける中で、「働きたい」という意欲はありながらも、経済的・社会的・精神的・環境的な理由で、就労困難な状況にいる人がいるという事実を知りました。その人たちの雇用創出をする必要性を感じ、このビジネスアイデアを実現したいと思うようになったのです。

 

──なぜこのビジネスが今必要だと考えているのですか?

少子高齢化が進む日本において、引きこもり、80代の親が50代の子どもを支える「8050問題」、若年者による自殺増、障害者の雇用など、多くの課題があります。その背景要因は一つではなく、様々な要因が複合的に絡み合っていますが、税金に頼るだけでなく働きやすい環境をつくることも大切です。

就労困難者は「働けない」のではなく、現在の常識や既存のルールの枠組みの中では、能力が発揮されないため、その仕組みや環境を変えていくことで、その人の「可能性」を引き出していくことができます。

就労困難者を戦力として捉え、労働者として当たり前の「権利」と「賃金」を保障することで、その人が「働くこと」で笑顔になる機会を増やし、周囲の人の共感を得ていくことができると考えています。

 

──アクセラレータープログラムに参加した時点での課題意識と、参加した上での成果はどのようなものだったでしょうか?

本プログラム開始時点では、「既存事業をブラッシュアップするという課題意識」を漠然と持っていました。プログラムが進むにつれて「その既存事業は何のためにあるのか、なぜその事業をしようと思ったのか」ということについて、自身の原点を再確認することができました。また、事業を周知していくには動画が有効な手段であることにも気づくことができました。

 

──ビジネスアイデアの実現に向けて、これからの展望をお聞かせください。

既存事業のブラッシュアップを含め、収益性・継続性のある新規事業の創出をしたいです。事業を開始して約2年が経過し、会社を運営していく上でのコアな部分(人材確保や運営体制)が確立でき、事業の課題も明確になりつつあります。これからは既存事業をブラッシュアップしつつ、新規事業(VR動画作成等)と他のIT企業と連携するなどして、今までの福祉業界にはなかった雇用や業務の創出をしていきたいと思っています。

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