IDEA

FanFunResearch

木村 明日香
大学卒業後、企業に就職するも、学生時代に味わった「わかっていない物事を追求して明らかにする面白さ」が忘れられず、大学院に進学。日本とイギリスで美術史(本の挿絵)を研究する。その後大学広報に携わり、「存在を社会に広く伝え、知ってもらうこと」の重要性を実感したことで、知られざる学術研究の魅力を伝えたい思いが募り、その方法を模索中。

──現在考えられているビジネスとその目的はどのようなものでしょうか?

ビジネスのタイトルは「FanFunResearch」。キャッチフレーズは「研究に出会い、研究を身近に感じる」です。

「FanFunResearch」は、社会の中で学術研究に接する機会を持たない多くの人が、オンラインでアクセスできる研究記事・論文・本などを直感的にブラウジングして、興味あるコンテンツや面白い研究、そしてより正確な情報と楽しく気軽に出会えるWEBサービスです。

 

──具体的な事業としてはどのようなことを計画されているのでしょうか?

アカデミックな世界と繋がりのない人が、何となく自分の好きなトピックや情報を手に入れて楽しみたい時や、情報についてより深く知りたい時、あるいは根拠のある情報を探したい時。そんなシチュエーションで、空き時間を利用してスマホなどで気軽に研究論文にアクセスできれば、知的好奇心を満たすことができ、研究者による研究成果を実社会で役立てる機会にも繋がるのではないかと考えています。

 

──ビジネスアイデアの特徴を3つ上げるとしたら、どんなところでしょうか?

1つ目は、国内の学術情報を一括で検索できること。国内の論文やジャーナル記事などを検索する際の主要な検索システムである「CiNii」や「J-STAGE」などに登録されているコンテンツの中から、本文の閲覧が可能な情報を検索します。また、抽象的なキーワードを用いた場合でも、自分の興味を反映した内容を可読性の低いPDFではなく、テキスト形式(レスポンシブ対応)で表示することが可能です。

2つ目は、関心あるキーワードから、自動でおすすめ記事を表示すること。利用者が興味のあるキーワードを事前に登録(または自動で収集)することで、自動的におすすめの内容が表示されます。論文のタイトルや著者だけでなく、内容を表す単語(タグ)の表示や、内容を視覚化することで、研究概要を直感的に把握することができます。また、関連する研究分野も示し、学問の認知も高められます。

3つ目は、研究者が注目する本の紹介。ジャーナルに掲載されている書評を新着順に紹介します。各分野の研究者が、これまでの研究動向を踏まえて評価している書評は、その分野に馴染みのない人がポイントや新規性を理解する助けとなり、目にする機会の少ない研究書を手に取り、新しい世界と出会うきっかけになります。

 

──なぜこのビジネスアイデアを実現したいと思うようになったのでしょうか?

多種多様な研究が行われているにもかかわらず、実際にその研究内容を知ったり、利用したりする機会はごく限られ、残念だと感じてきました。特に自分が関わってきた研究分野は、ニュースとして取り上げられて注目される機会は少なく、ますます実社会と隔たりができていると感じています。「FanFunResearch」のような気軽な仕組み、サービスがあれば、より多くの人が「研究」を身近にとらえることができ、社会の人々にとっても研究者にとっても有益だと考えるようになりました。

 

──なぜこのビジネスが今必要だと考えているのですか?

近年、研究論文・資料の電子化と公開が進められていますが、データの活用方法や検索の利便性について検討が進んでいるとは言えません。さらに研究者でない人にとっては、膨大な情報にアクセスできるようになったとはいえ、論文など専門性の高い内容を探し出す必要性を感じにくいはずです。また若者層は「自然と興味のある情報だけが手元にあるようにする、つまり情報を引き寄せる行動」を行う傾向にあり、自ら適切なキーワードを入力して欲しい情報を正しく検索するという従来型のシステムの利用は、ますますハードルが高くなっていくでしょう。より気軽に興味のありそうな研究を見つけ、直感的に内容を理解できるサービスがあれば、学術研究をもっと身近に感じ、活用が広がるのではと思います。

 

──アクセラレータープログラムに参加した時点での課題意識と、参加した上での成果はどのようなものだったでしょうか?

プログラムに参加させていただいた当初は、「多くの研究や論文が、知られないままなのがもったいない」「アカデミックな世界と実社会のギャップを何とかしたい」「自分が関わってきた人文学分野の研究が認知されていない危機感」など漠然とした、しかも複数の視点で考えをスタートしていました。セッションでお話をさせていただく中で、最も重要だと考えるポイントを絞り、「より多くの一般の人が、研究を身近に感じ、気軽に研究と出会うには?」という問いを立てることができました。さらにそこから研究発表イベントなども検討してみましたが、突発的で限られた人を対象にするものではなく、「より多くの一般の人」に向けたサービスが必要ではと思うに至り、WEB上でのコンテンツを考えるようになりました。

 

──ビジネスアイデアの実現に向けて、これからの展望をお聞かせください。

論文などの検索システムの実情、思い描くサービスに近い技術のリサーチなど、まだまだ不足している知識が多いため、最新動向を調べ、コンテンツをブラッシュアップしていきます。実現の可能性が見えてきたら、個人では実現が難しいため、ビジョンを共有できる協力先を探していきたいと思います。

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