IDEA

Roomie

Roomie
小原 亜紗子
京都内の大学を卒業した後、輸入車ディーラーの営業を4年、不動産会社で3年、人材紹介キャリアアドバイザーで4年働いた後、個人事業主として開業し、現在3期目です。保育園に通う2人の子育てをしながら、長年の目標であった不動産事業の開業準備中。個人事業主としては主に、請負・業務委託のスタイルで働き、KUMIKIPROJECT(DIYでの空間づくり)も一部業務を手伝う。京都生まれ、京都市東山区在住。2020年からは「東山区まちじゅう図書館プロジェクト」という団体を立ち上げ、私設図書館を運営。

──現在考えられているビジネスとその目的はどのようなものでしょうか?

ビジネスのタイトルは「Roomie」。キャッチフレーズは「欲しいまちの形をともに考える、まちづくり&不動産屋さん」です。京都市東山区に住んでいる人たちの「あったらいいな」という思いを、不動産という手法を使って形にするお手伝いをすることで、この地で生きる人の誇りや楽しみを高めたいと思っています。

 また新しく東山区に住みたい人・ここで何かチャレンジしたい人たちには、この地域の魅力や人を紹介し、「この地に来てよかった」という気持ちを一緒に共有し、東山区で暮らす安心感を増やしていきたいです。

 

──具体的な事業としてはどのようなことを計画されているのでしょうか?

このあたりで家を探しているけれど、「本当にこの地に馴染めるかわからない」「子育て環境はどうなのか」といった、住んでからのリアルさに不安を感じ、なかなか家探しが進まない方もおられると思います。私が行う不動産事業は、ただ不動産物件を紹介するだけでなく、具体的な自分の移住エピソードや地域の食・住・居場所など楽しめるポイントを紹介し、住んでからの暮らしを心待ちに思ってもらえる機会を提供をします。

 

──ビジネスアイデアの特徴を3つ上げるとしたら、どんなところでしょうか?

1つ目は、東山区をはじめとした不動産紹介の中で物件のストーリーを大切にした仲介業
高く早く売れたらよいという従来の不動産の考え方ではなく、物件1つ1つの持ち主の思いやストーリーを語り継ぎ、それに応えてくれる次の担い手を探し、バトンを渡す・つなぐ仕事をする。そうすることで、周りに住んでいる地元の方も安心して迎え入れることができると考えます。

2つ目は、街の声を聴いて地域のニーズを拾い上げ、形にするお手伝い
この地(東山区)で何が求められているのか地元の声をできる限り集め、地域のニーズとマッチした商いを呼び込み、活動者に来てもらえるよう、地元の声を発信する。担い手候補者にとっては、東山区にはお客さんがいる、一定数の見込み客がいる、求められている状態があると事前に把握することができ、少しでも安心感をもって開業しようと思える土壌づくりをします。そして開業時には、自分たちRoomieをはじめ、地域のママさんたち・リタイア後の元職人さんなど地元の方たちと協力して店作りを手伝います。

3つ目は、地域の魅力を地域の人の力を借りて発信すること
広告料やライター執筆料目的とは違い、地域の魅力を、そのユーザー(地元民)が発信することで、移住検討者に安心感を与えたい。地元民にとっては感度の似ている人=未来の仲間に来てもらえることにつながると考えます。地元民にとっては、自分たちでお店紹介や店主紹介等をすることで、自分たちを含む地元民の暮らしを見つめなおすことにもつながり、双方にとって嬉しい未来のために情報を発信しあう取り組みが行われます。

 

──なぜこのビジネスアイデアを実現したいと思うようになったのでしょうか?

自分の事務所として選んだ物件は築不詳の元陶芸工房兼倉庫の物件で、2年以上も買い手がつかなかった物件でしたが、実際に見てみると面白味のある物件で、街の特色(陶芸のまち)やストーリーを秘めている物件でした。購入後も地域の方には「若い人が来てくれてうれしい嬉しい」と期待していただいている状況です。

こういった物件は東山区に点在しているので、全てとはいかなくとも、空き家に次の担い手が入ることで地域の安心感が増す。そして、新しい方にとってはチャレンジできる喜び・受け入れてもらえる安心感が生まれ、それらが重なって町が明るくなると確信しました。

 

──なぜこのビジネスが今必要だと考えているのですか?

東山区は高齢化率No.1、少子化No.1、空き家率も高く、社会的な課題がたくさんあります。東山区に若い世代が増えることにより諸問題は僅かながら改善する。一方で、それだけでは同時に他の地域(移住前の地)からパイの奪い合いみたいになってしまう。この取り組みでは、ただ若い世代を誘致するのではなく、住んだ後の心の充実感を高め、住み続けたい気持ちにつなげていくことが重要だと考えます。さらに、この地の魅力を高めることで、ここで生まれた子供たちが地域のことを好きで居続ける、住み続けたい気持ちを持ち続けられる街づくりに寄与できると思っています。

 

──アクセラレータープログラムに参加した時点での課題意識と、参加した上での成果はどのようなものだったでしょうか?

本プログラムに参加するまでは、自分の頭の中にあったことがすべてバラバラで(図書館の運営、生活費、維持費、不動産の集客の仕方)、あれもこれも考えなければいけないことが山積みだと思っていました。

プログラムが進むにつれて、自分のやりたいことは全てつながっていて、本業(不動産)の在り方、Roomieのありかたがきちんと固まり運営していければ、おのずとすべての課題が解決していけるとまとまりをもってとらえることができました。具体的には、Roomieは「不動産屋」なのではなく、Roomieの中に「不動産部門と小さなまちづくり部門がある」という位置づけでとらえることにしました。

不安もありますが、メンターやサポーターの方々が「自分の地域にRoomieがあればいいのに」と言っていただけたことを励みに、自分の住む町を自分事として魅力的に楽しくしていきたい、とわくわくできる思えるようになりました。

 

──ビジネスアイデアの実現に向けて、これからの展望をお聞かせください。

私は1度出会った人の名前と顔を覚えるのは得意なので、一度でもあった人は私にとってはずっと忘れられない人になります。例えば、家を◎◎な条件で探しているという方がいたら、私は「別で決まった」と言われない限り、ずっと覚えたまま探すことがよくあります。

 もし、まちづくり部門の1つの足掛かりであるRoomie私設図書館に来てくれた何人かの人が「町に◎◎があったらいいな」と口にしたら、できる方法・できる機会・できる人を考え探すでしょう。また、不動産部門においても東山区役所と連携を模索したり、住民の声を積極的に聞いていきたい。また、まちの知り合いのお店等に「Roomieの想い」をのせたチラシを置いてもらうなど、地道でRoomieらしい方法を選択し、1つ1つの出会いを大切に向き合っていこうと思います。

自分の住む東山区で、地域の人が迎え入れてくれた温かい気持ちを今度は自分が誰かに返していく。それが自分の使命であり、それが自分たちの暮らしやすさにつながると信じて活動していきます。

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