【U35起業家育成プログラム】共感とクラファンからはじめる、誰でもチャレンジできる起業の仕方
副業/復業・フリーランス・起業・在宅ワーク・ノマドワークと幅広い仕事の方法を選ぶことができる現代。自分の強みや得意なことを活かし起業をされたゲストを招き、わたしらしい「働き方」・「起業」の仕方について学ぶイベントが開催されました。
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田中 成美さん(ASTANE 代表/京都信用金庫 京信人材バンク 共創パートナー)
滋賀県出身。京都府立大学卒。大阪公立大学大学院 在学中。2016年新卒で大阪の食品製造機械メーカーに入社し、WebやSNSを活用したデジタルマーケティング事業に取り組み、ブランディング向上や売上アップに貢献。2023年に個人事業主として独立し、中小企業のデジタルマーケティング伴走支援や大学生・若手社会人向けのキャリア支援を行っている。
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炭竈 昌人さん(株式会社kitasu 代表取締役)
大学在学中の2017年1月から3月にかけてヒッチハイクで日本一周。 人と繋がることの価値と可能性を感じたことから、それを実践し叶えることを目的に 学生団体 mocを立ち上げる。その後、自分の中の秘密=自分の想いを語り叶えていく場として「秘密基地こむこむ」として活動を開始。2022年5月に株式会社kitasu設立。2024年3月から規格外野菜を使ったスパイスカレー屋「himeru」をキッチンカーでの販売から実店舗へ移行。
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モデレーター:仲田匡志(株式会社SOU 代表取締役 /(株)MIYACO)
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- 妥協しないことは、自分を大切にするということ
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―はじめにデジタルマーケティングで企業を支えている田中さんから、起業までの道のりを教えてください
田中さん:実家が自営業をしていたのですが、決まった時期にお給料が入ることが当たり前ではなく、いわゆる公務員のように安定したお仕事に最初は憧れを持っていました。
それから学校の先生になろうと、塾のアルバイトをしていたある時、自分の担当の生徒から『先生を変えてほしい』とお願いされたんです。理由を聞いてみると『田中先生は、勉強が嫌いな人の気持ちがわからないから』とストレートに言われました。ショックだったものの「自分は先生に向いていないかも」と思っていた素直な気持ちと向き合う大事なきっかけになり、それから就活をはじめました。
―子どもの素直なフィードバックは胸にささりますね。ただそのことも大事な気づきと捉え、自分に合った仕事探しがはじまったんですね
田中さん:それから就活がはじまるのですが、私の性格が「正直すぎて嘘をつくのが苦手」で、面接でも『弊社が第一志望ですか?』と言われても、正直に第一志望でないと伝えて落ちる日々だったんですね。周りが面接官に合わせて上手く話す中で、就活がうまくいかない自分。100社以上落ちて、自分は社会不適合者じゃないかと真剣に悩んでいました。
―極端な例ですが、嘘をつける人が採用されて、正直に答えている人が落とされる。会社に合わせられるというと聞こえはいいですが、自分の気持ちに蓋をしないといけない就活は違和感ですよね
田中さん:そうした藁をもすがる思いでいたときに、とある中小企業とご縁がありインターンシップをさせていただくことになりました。せっかくいただいたチャンスだと思って一生懸命働いていると、だんだんその会社に愛着が湧き、社長のビジョンにも共感し、この会社で働きたいと思うようになりました。
当時、新卒採用をしていなかった会社なので、ダメもとで私を採用して欲しいとお願いしたところ「いいよ!」と言っていだき、予想外な形で私の就活は幕を閉じました!
―いわゆる一般的な就活のレールとは異なるアプローチですよね。結果として諦めなかった田中さんの願いが叶った形ですね!なぜ諦めずにいられたと思いますか?
田中さん:そういう意味では本当にしんどかったのですが、妥協して後悔をしたくなかったという気持ちが強いですね。後悔しない生き方は自分を大切にしていることだと思います。
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- 自分に合う仕事は「自分でつくる」
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―なるほどです。後悔しない選択を重ねて就職をされたその後についても教えてください
田中さん:就職したその会社が機械メーカー企業だったのですが、自分の力を発揮できる仕事がなく苦労しました。それからよく観察して、何が自分の力が発揮できるだろうと考えたときに、まだ社内で誰も手をつけていない「WEBサイト」じゃないかと直感的に感じ、社長に直談判をしてWEBサイトを運営し広報活動を行う仕事をつくらせてもらえたんです。
それからWEBサイトの運営、広報、マーケティングについて勉強し、ありがたいことに、会社の売上に貢献できるようになりました。
―ない仕事は「つくる」だったんですね。社長さんが田中さんに任せると決められた「信頼」も大事なポイントだったんだろうと感じました。
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- 自信の先に生まれた役に立ちたい思い
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―まずは会社の中で自分の力を発揮できる仕事をつくられ、それから副業がスタートしたとお聞きました。その流れも教えてください
田中さん:地方の営業先の会社に伺っていた時です。いい商品をお持ちなんですが、世の中にその良さが伝わっていないなと感じたんですね。とてももったいないなと。なんとか届けることはできないだろうかと問いが生まれた瞬間です。
その時から、世のため人のため、地域のためにデジタルマーケティングを活用することを伝えたいという気持ちが芽生えたんです。
―まさにご自身のスキルや力に「自信」が生まれはじめたからこそ、役に立ちたいという使命が生まれたようにも感じますね!
田中さん:そうですね、それはあると思います。同じ時期に社内で着々とWEB/SNSマーケの実績が付きはじめていたので。
一方で、このままでいいのか、これって安定なんだろうかと不安な気持ちになったことも、副業のきっかけですね。元々安定したいという気持ちと達成したい気持ちが強いので、社内の課題に応えるだけで大丈夫だろうかと感じたんだと思います。
それから「会社の田中」ではなく、「田中成美」として生きていく軸が生まれ、副業をさせていただくよう会社にお願いをしてスタートしました。
―自分を活かすステージが、「会社」というフィールドだけでなく、「社会」へと広がられ、活かす手段が「副業」だったんですね
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- 起業の原点
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―それではもう1人のゲスト炭竈さんにもお話しをお聞きしたいと思います。炭竈さんは学生時代にカフェ・BARの飲食事業を個人事業としてスタートされましたが、何がきっかけとなられたんですか?
炭竈さん:僕が大学生の時に、「タオルマン」と呼ばれている方と出会い、ヒッチハイクの旅したことがきっかけです。その方がバックパッカーとして世界を放浪されていたある時、野犬に噛まれ狂犬病になり、治療のために違う国に急いで運ばれ、色々な困難に見舞われたんですね。そして最後にお金がなくなり帰国ができなくなったんです。ところが、絵を描くことができたので、絵を描いて売ってお金を集めて帰国されたお話し聞いたんです。
シンプルにすごいなと思って、自分の得意なことで生きているような感じや未知への体験に興味が湧き、旅をはじめました。
旅先では、何をしたいというわけではないのですが、『起業をしたいんです!』と話していると、見ず知らずの人が僕を応援してくれることに気づいたんです。
当時はSNSが広がりはじめ、友人や知らない誰かの投稿を見て傷ついたり疲れている人もいたんですね。一方で、見ず知らずの自分にあたたかい言葉をかけてくださる人がいる。そうした周囲や社会で起こっていることと、自分の体験との違いが違和感となり、繋がりを大事にしたいと思う軸が起業の軸につながっていますね。
―意図しないところに、起業のきっかけがあったんですね
炭竈さん:振り返るとそうですね。その後も国内でヒッチハイクをしていたんですが、必ず「なんで僕を乗せてくださったんですか?」と聞くようにしていたんですね。するとほとんどの方が、「困っている人を見たら助けるのは当たり前」の精神で乗せてくださっていたことがわかりました。
一番印象的だったのは、言葉を話すことが難しいお父さんと足が不自由なおばあさんを乗せたおじさんの車に乗せていただいた時です。いつものように、なんで僕を乗せてくださったんですか?と尋ねると『みんなは1人のために、1人はみんなのために。だからだよ』とおじさんが教えてくださったんです。恩が巡り幸せが循環することを願う気持ちに触れ、気づけば涙が止まらなかったです。。。
なので、自分は「衣食住」の人の暮らしに関わる事業を行い、人が繋がり合えることを事業の中心に置くようになりました。
―炭竈さんにとって、相手を想う気持ちが伝わることが「つながり」だと気づき、形にする手段が起業だったんですね
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- 自分を活かすための「誰のために」
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炭竈さん:2年前に株式会社にしたのですが、これも1つの転機になりました。会社にする前は、個人事業=自分、自分=事業となりやすく、自分がしたいことが強すぎたんですね。例えば、自分視点で開発したメニューは全然売れなくて、たくさん人が集まる場所にキッチンカーで出店して30食用意したのに1個も売れないとかありました。
―それはメンタルやられますね
炭竈さん:本当にそうです。でも「お客様のために」が、いつしか「自分のため」になっていたことに気づいたんですよね。今のままでは自分の趣味の延長じゃないかと。
これは教えていただいたことなのですが、「自分のカレーが美味しいから売れる」のではなくて、「自分のカレーを食べたい」と思ってくださる方がいて、その方々を幸せにしたいと売り手が思っているから買っていただける。あくまでもお客様の幸せを想う気持ちがないといけないと思ったんです。
―まさにヒッチハイクで経験された、恩が巡るような相手を想うことからはじまる感覚ですね!
炭竈さん:だからこそ、誰のために自分が応えたいのか、応えられるのか。お客様がその時間幸せになれるかを考えるようになりました。また、会社にするタイミングも重なり、それまで作っていなかったのですが、「事業計画書」を作成しました。誰のための商売なのかを「言語化」してからブレもなくなりましたね。
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- 誰かが認めてはじめて強みに、そして信頼へ
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―では、田中さんには副業の炭竈さんには、起業をされてからのお話しをいただいてもいいですか?
田中さん:副業をはじめた当初、実績がなく年齢や女性ということからお仕事をいただく機会に恵まれなかったんです。前職で売上に貢献をしていたものの、世間から見たら会社自体の認知度が決してあるわけでもなく、お客様に自分の実力や強みが届かない現実がありました。
それから4つ資格を取得し大学院で学び直すことをしたのですが、自分の実力・実績の見える化をする意味も大きかったですね。
ただ、最初のお仕事は、京都信用金庫さんの「京信人材バンク(企業に副業/複業人材を紹介するサービス)」のご紹介でした。これまでの私のバッククラウンドや活動を知っていただいた京信さんが、私への信頼をバトンに、京都の老舗企業さんをご紹介いただきお仕事がはじまりました。
炭竈さん:僕の初めてのお客様は、地域の方で今でも覚えています。ちょうど2020年のコロナ禍、飲食店みんなが本当にしんどい時で『大変だけど頑張りや!』と声をかけてくださったんです。それから、目の前のお客様を幸せにすることにただただ一生懸命になって走っていました。すると、徐々にお客様が次のお客様を連れてきてくださる流れが生まれ、ありがたいことに地域の方やお店を好きになってくださった方が、自分の居場所のように来てくださるようになりました。
―2人の共通点は「信頼」から生まれる「繋がり」であるように思いました!
実力や強み、お客様への真摯な姿勢といった無形のものが認められ「信頼」になり、その信頼がお客様との「繋がり」を生み出していますね
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- むすびに
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―最後に、会場の参加者の方にメッセージをお願いします
田中さん:起業は自分を生きるための1つの「手段」 だと思います。なぜ起業をしたいのか、起業が必要なのかを、自分自身に問いかけてみてください。そして、感謝の気持ちを忘れずに!
炭竈さん:経営は選択の連続で、答えのない選択が多いです。だからこそ、自分が選択した道をどうやって「正解」にするかを考えてあげてください!
―自分を生きるための起業・チャレンジを続ける田中さん、炭竈さん、大事な気づきをたくさんいただき、ありがとうございました!