【イベントレポート】U-39 KOIN Campus~京都らしい文化と技術を 三宅誠己の世界戦~
U-39 KOIN Campus第2回目は、京都の伝統ある金彩工芸の伝統工芸士として起業された三宅誠己(みやけのぶみ)氏をお招きして、京都らしい文化と技術を残すための挑戦やモノづくりにかける想いを語っていただきました。
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登壇ゲスト プロフィール
金彩デザイナー 三宅 誠己(みやけ のぶみ)氏
1967年京都市生まれ。高校卒業後18歳で職人の道へ。2014年に三宅工芸を設立。2019年に伝統工芸士認定を受ける。現在まで着物職人の金彩工芸士一筋で、制作した和装花嫁衣装は1万着にも及ぶ。某国王室に作品を提供。着物作りの技術や作品を世界へ広めることも視野に活動中。
▼手掛けるブランド
【NSplus/エヌエスプラス】https://nsplus.net/
ネットショップを中心にアクセサリーや小物を製造販売する
【NOB MIYAKE】https://nobmiyake.net/
フォトウエディング提供や打掛レンタル、アパレルなどを製造販売する
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モデレーター
株式会社想結び 西尾 創平
・株式会社想結び HP:https://co-omusubi.jp/
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01.オープニング
日本の伝統工芸に対する世間のイメージについて、三宅氏は次のように語りました。
「着物や伝統工芸は、昔のもの・高価なもの・飾るだけのものという固定概念がある。しかし、伝統工芸を守るためには、時代や国ごとに異なるニーズに合わせて作品や商品を変える努力が必要です。特に今の日本や京都は、世界から注目を浴びており、挑戦するには絶好のタイミングだと思います。」======================================
02.事業紹介
〜着物制作の工程や技術〜
三宅氏は、手描き友禅の現状について、かつての伝統技術で制作される振袖は現在ではほとんどなく、レンタルが主流となっていると説明されたうえで、金彩工芸を支える具体的な技法や制作の裏側を以下のように説明しました。
染色技術:裏地を白生地のまま残し、表面だけを染める独特の技法。
工程の多さ:一着の着物を完成させるまでには20〜30もの工程があり、その全てが伝統工芸の技術の粋を集めたもの。
繊細な加工技術:厚さがミクロ単位の青いテープを手作業でカッティングする職人技や、割れやすいアワビの貝殻を加工する工程。
特注作品の挑戦:芸能人や著名人からのオーダーに応じた独自の打掛や白無垢を手掛ける。
こうした高度な技術や工程を通じ、京都の伝統文化を次世代に伝えるための努力を続けられています。<画像は、金彩が施された布を持って説明されている場面です>
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03.職人として・起業家として
・三宅氏の思う”職人像”
「いかに綺麗に早く作るかが職人の仕事。注文を受けた商品をつくるのが職人、自分で自由なものをつくるのがアーティストですね。」
「職人は自分には出来の良し悪しがわかるけど、発注いただいたお客様には絶対わからん。どんなに調子悪くても、どんなに体調悪くても、人から見て『三宅さん今日調子悪いですね』って言われたらアウト。 他の人には絶対わからへんように作ってます」
・お客さんからの無茶な要望は”有り難いこと”
「前例がないことを頼まれたとき普通職人は『いや、できません。他に行ってください』って言うんです。前例がない、やったことないのはありがたいこと。やらざるを得ない環境ってなると普通嫌だなと思うんですけど、”くださってっている”と思っています。有り難いって感じです。」
・独立した頃に学んだ”出来ないことでもまずやってみる”
– 非常識な要望をいただいた時に絶対できないと答えてしまい、先輩に怒られたことがあったそうだ。
「先輩は『あれ言ったらお前終わりや。できませんって言ったら終わりやから、せめて、はい、わかりました。とりあえずやってみますと言いなさい。』と言われましたね。
「その時からすごく反省したんです。確かにそんな前例もないし、やったこともないし、見たこともないけど、やってみないとわかんないじゃないですか。だから、できませんって言わずに、とりあえず持って帰ってやってみますっていう風に変えたんですよ。」
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04.三宅氏の挑戦〜実績の紹介〜
– 某国王室に作品提供
– パリのルーブル美術館での打掛展示
– ドバイでの着物ショー作品展示
– 東京コミックコンベンションでのアパレル販売
– バットマンとのコラボ
– 最近注力されているインテリア制作 など
世界中で活躍される三宅氏ならではの制作秘話をお聞きしました。
・すぐやるが鉄則
「いつかやるとか、そのうちやるとか言ってるんやったら、もう今すぐやるべきです。やるって決めたらできるんですよ。」
・世界一の日本の伝統工芸
「日本のデザインは世界一だと思っているから。そのデザインを何かの形に変えて世界は回っているって確信しています。ただ、その文化、デザインは時代に合わせて変えないといけないです。」
・三宅氏の“使命”
「僕はこっちの世界でも世界に日本代表としてもっと有名になると決めていて、京都のこんなオッサンでもここまで行けるってことで、日本人に夢と希望を与えるのが僕の使命なんです。」
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05.グループセッション/質疑応答
・1番気に入っている作品は?
「1番と決められない。玄人好みと素人好みがあるから」
・三宅さんにとっての伝統工芸とは?
「残さなければいけないものであり、昔から引き継いできたものであり、それは受け継いでいくべきもの。でも今の時代に必要ではないもの。文化が変わっている。でも無くなったら悲しいですよね。ニーズがない中で、じゃあ何が必要とされるのか?を考えないといけない。」
・自分の使命に気づくには?
「自分がそのステージでどこまでいくか、希望や夢ではなくて決めるだけ。覚悟できるかできないか。」
・沈んだ時はありますか?そういう時にどう立ち直りますか?
「売り上げの95%を占めていた会社が突然倒産した時は、チャンスだと思った。悪いことを悲観して思うのか、それともチャンスと考えて未来へ進むのか。同じ出来事をマイナスにするかプラスにするかが大事だと思う。」
・ 息子さん以外にも技術を継承しようと考えられていますか?
「もちろん、息子をサポートしてくれる人も今後必要になる。」
他にも”世界に向けて動画発信したい”、” ゼロから新規事業を立ち上げるにあたって”など、参加者と様々な議論を交わしました。
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06.最後に/メッセージ
三宅氏「皆さんそれぞれ役割が規模に応じて色々あるはずなんです。それに気づいてやるかやらないか。みんながみんな世界的に有名になれなんて思ってない。覚悟を決めて準備をすれば、それに見合った試練が来る。それを乗り越えていってほしい。」
世界で活躍する三宅氏の言葉や活動から、伝統工芸の未来を切り開くための熱い思いと、現代に必要な変化の具体例を学べる貴重な機会となりました。