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Googleやメルカリも導入。コミュニケーションツールOKRで作る最強チーム|3/27開催イベントレポート

WRITER : 北川由依
PHOTO : 北川由依

GoogleやFacebook、メルカリ、世界の名だたる企業が導入する目標設定・管理のためのフレームワークにOKRがある。

OKRとは、Objective and Key Result=目的と重要な結果指標の略。OKRを使えば、「ワクワクしながら目標達成に向かって働ける」との声も聞くが、どのようなものなのだろうか?3月27日に開催された、U35起業家向けイベントの内容を元にご紹介する。

今回講師をお願いしたのは、株式会社タバネル 代表取締役の奥田和広さん。大手企業から中小企業まで様々な業種の企業に、OKRの導入コンサルティングを提供している。 

チームをつくる3つの要件

本イベントタイトルは、「Googleやメルカリも導入するメンバーがワクワクしながら働ける最強のチームのつくり方~」。そもそも、タイトルにもなっている「チーム」とは、何を指すのだろう?奥田さんはこう説明する。

・複数の人がいる状態・・・関係性なし
・グループ、集団・・・同じルールの中にいる
・チーム、組織・・・同じ目的を目指す

チームとは、同じルールの中にいて、『共通の目的』『貢献意欲』『コミュニケーション』の3つを満たすもののこと。複数の人がわざわざ集まり、一人では成し遂げられない共通の目的の達成を協力して目指します」

そのように定義した上で、奥田さんは玉入れとリレーを用いて、3つの要件がチームにどう作用するかわかりやすく説明した。

「例えば、玉入れとリレーをするとしたら、どちらの方が頑張れますか?多くの人が、リレーと答えるでしょう。どちらもチームの勝利が共通の目的であることは変わりませんが、玉入れは終了後まで成果がわからず、個人の貢献も不明確。しかしリレーは常にチームの勝敗も個人の貢献度も明確なのです

しかし、せっかくチームで目標達成に向けて動き出し、「新しく◯◯をしませんか?」と提案しても、「何をバカなこと言っているの?」「忙しいのに面倒なこと言わないで!」と言われてしまうと、多くの人にとってチームへの貢献意欲は下がってしまうもの。

そうした事態を防ぐために、Googleが具体的にしたのが「効果的なチームの5因子」だ。

「重要な順に、『心理的安全性』『相互信頼』『構造と明確さ』『仕事の意味』『インパクト』が挙げられています。簡単に言うと、安心してコミュニケーションできる関係で、透明性・明瞭さがあることがチームにとって大事ということ。こうした環境が整っていれば、もしチャレンジして失敗しても、貢献意欲は下がりません」

なぜ目標管理はうまくいかない?

チームについて理解した後、話題は「目標管理の問題点」に移った。チームとして共通の目標に向かうため、目標管理は企業の多くで取り入れられている。しかし、「管理がうまくいっている企業はあまりない」と奥田さんは話す。

その1つが、目標の形骸化だ。

「例えば、年度始めに上司から目標管理シートを出してねと言われたとします。すると部下は、その場しのぎで設定し、半年後には上司も目標が何かわからず、部下もどこにシートを片付けたかわからない状態が起こりがちです。そして年度終わりに、上司が『目標未達成だね』と問いかけると、部下は『1年前と状況は変わっていますから』と」

また、目的の共有や理解がないことも問題の一つだと話す。

「有名な例え話に、レンガ積みの話があります。『何をしているの?』と聞かれた時に、『レンガを積んでいる』『食うために働いている』『後世に残る町の大聖堂を造っている』と答えるのでは、大きな違いがありますよね。

しかし、目的が共有されていても、目標が曖昧なことが多くあります。大聖堂を造るために、レンガは一日何個積み上げたらいいのか?最終的に高さは何メートルまで積み上げるのか?それとも、スピードより寸分の狂いなく丁寧に積み上げることを求められているのか?上司と部下の認識がずれていると、頑張っても評価に結びつきません」

さらに、予測困難で正解のない時代に移り変わり、オペレーション思考から学習思考へ変化を求められていることも、既存の目標管理方法がうまく運用されない要因の一つだと、奥田さんは話す。

「正解のない時代なので、トップだから答えを知っているわけではありません。今まではトップが描いた設計図に従い、メンバーは歯車として、効率重視で働くことが良しとされていました。しかし学習思考ではボトムアップがキーとなるため、メンバーは作り手として実験を楽しみ、失敗から学びながら作る必要があります

チームを強くするOKR

チームについての理解、そして目標管理の問題点を知った上で、本イベントのメインであるOKRに話は進んだ。

OKRはインテルで開発され、今やGoogle・Twitter・メルカリ・Sansan・朝日新聞などIT企業のみならず多様な業種で導入されている目標管理方法だ。

OKRは1個のOに対して、2〜5個のKRで構成される。

・O=Objectives(目的)
 「何を達成したいのか?」「どこに向かおうとしているのか?」

・KR=Key Results(重要な結果指標)
 「どのように目的を達成するのか?」「目的に近づいているのかをどう把握するのか?」

「Objectivesには、定量的な数値目標ではなく、ワクワクする目的を設定しましょう。『挑戦的』でメンバーにとって『魅力的』なメッセージ性を持つもので、組織全体で『一貫性』のあるものが適切です。僕は3ヶ月後、『こうなっていたら最高だよね』ってことを目的に定めることをオススメしています」

「Key Resultsを設定する際には、目的の達成方法、達成度合いを明確にしましょう。重要な要件が4つあり、『目的への結びつき』『計測可能』『重要なものに集中』『簡単ではないが達成可能』です

チームで設定したOKRを運用する際、大切にしたいのが巻き込みだ。メンバーが高頻度でチームに参画する場を設けることで、全員が同じベクトルに向かい、協力と当事者意識が生まれると奥田さんは考える。

「上司部下で進捗や要望を確認する『1on1』、チーム全員でOKRに向かう予定確認をする『チェックイン』、チーム全員でできたことを賞賛・承認しあう『ウィンセッション』をすることで、Googleが提唱する『効果的なチームの5因子』を満たした運用が可能になります」

こうしてあっという間に、奥田さんの講義は終了。質疑応答に移った。今回は、オンライン上でやりとりできる「Slido」を導入。参加者からの質問に、一つずつ答えていった。

──少人数のチームに、OKRは向いていないですか?

奥田さん 少人数がどのくらいの人数かによりますが、小さいチームだからといって意思疎通や目的意識ができているとは限りません。何もせず、同じ優先順位で物事を考えられることは少ないと思うので、OKRは有効です。

──OKRは何名くらいのチームに適切ですか?

奥田さん 3〜8人です。それ以上の人数になるなら、複数チームに分けた方がいいですね。8人を超えると会議で話さない人も出てきますし、1on1をするにしても上司が覚えきれなくなるので。大きな組織であれば、3〜8人のチームをいくつも作る方が、スムーズに運用できるでしょう。

奥田さんが質問に答える間にも、「Slido」には続々と質問が上がり、参加者の意欲とOKRヘの関心の高さを感じることができた。

 

OKRは目標設定・管理のためのツールとして語られることが多い。しかしイベントの最後、奥田さんは「OKRはコミュニケーションツールだ」と宣言した。

目的達成に向けて、チームで数々の対話を積み重ねる必要があるOKR。そのプロセスを重視するからこそ、OKRはワクワク目標に向かっていける最強チームづくりに効果的だと支持されているのだろう。

目標は決めるだけでは達成されない。OKRを使って、ぜひ皆さんのチームでも半年後も一年後も形骸化しない目標をつくり達成してほしい。

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