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起業の出発点で知っておきたい。初心者にもわかるベンチャーファイナンス。 | 7/31開催イベントレポート

WRITER : 北川由依

今年度、KOIN主催でオンライン開催している「起業に関心のある人のための起業準備セミナー」。第2回目は、株式会社Tech CFO officeの代表取締役社長、松本雄大さんを講師にお迎えし、「起業の出発点で考えるベンチャーファイナンス~京都の学生ベンチャー成功事例紹介~」を開催した。学生から社会人まで、これから起業を目指す人が15名ほど集まり、質問が飛び交う活発な時間となった。

そもそもベンチャー企業って?

よく耳にする”ベンチャー企業”という言葉。どういう企業を指す?と聞いてみると、「若い人が起業して経営する会社」、「少人数でスピード感あふれる経営をする会社」など様々な解釈が聞こえてくる。公認会計士の資格をもち、数々のCFO業務(経営企画・財務・経理)の支援をしてきた松本さんいわく、「ベンチャー企業とは自分の好きな物を好きな人と好きなだけ取り組む事」だとベンチャー支援を始めた駆け出しの頃にベンチャー社長から教わったそうだ。

「お金もない。人脈もない。世の中に出すプロダクトもできていない段階から、資金を集めて成長していくところが、大企業では味わえないおもしろさ。実力勝負の世界なので、3年で会社を畳むこともありますし、若くして成功されている方もいます」

ベンチャー企業の基礎を学んだ後は、シンキングタイム!ベンチャー企業の成長を支援するアクセラレーションプログラムの採択企業リストを見ながら、「お客さん」「投資家」それぞれの立場から応援したい会社を考えていく。

熟考の末、参加者の皆さんは、次々と企業名をチャットに書き込んでいく。「お客さん」と「投資家」では享受できる利益が違うので、自ずと応援したい企業も異なる。それを実感する時間となった。

ベンチャーファイナンスのトレンド解説

投資家の視点に触れた後は、ベンチャーファイナンスのトレンドについて学んだ。昨今、SNS上で「VCから資金調達しました!」と起業家の投稿を見ることも増えたが、実際のところはどうなのだろうか。

「日本の投資金額は、近年右肩上がりに増えています。しかし2018年の世界の投資額を見ると、国際的には規模が小さいことがわかります。投資家は増えているが、起業家は増えていない現状があります」

また、投資も人間がやっているということを実感するこんなエピソードも。

例えば出身大学の先輩がすごいと、後輩もすごいんじゃないかと色眼鏡があります(笑)。プロダクトが良いかどうかだけでなく、ユーザーがどれくらい熱量がありどの程度成長しているか、経営者/メンバーのバックグラウンドがどうで、所属している業界が何かなど様々な観点で会社の価値が決まのが、ベンチャーファイナンスのポイントです」

ファンド数や金額は年々増え、ベンチャーキャピタルに加え大企業の投資も増加傾向にあるという。会社に価値があれば年齢関係なくファイナンスをして、事業に使うことができる。事業を成長させていきたいと願う人達にとっては、大きなチャンスだ。

「ベンチャーに早いうちにお金をいれることで、100倍、200倍のお金が返ってくることもあります」良い会社を見つけ、早期に支援することは、投資家にとっても大きなメリットをもたらすのだ。

投資家コミュニケーションのポイント

起業を取り巻くステークホルダーには、従業員・顧客・投資家がいる。三者の要求の重なるところを大きくしていくのが、経営者の役割だ。顧客と従業員のニーズを満たした上で、いかに投資家とより良いコミュニケーションをとるか?

投資家に事業を伝える時のポイントは4つある、と松本さんは話す。

「最も大切なのはWhy。ベンチャー企業には個性があり、社長がこれまで体験してきたことや実現したい世界は異なります。それに基づいた事業をつくっていくと、バラエティ豊かなサービスが生まれる。だから投資家はまずWhyを見るのです」

次に、顧客ニーズと提供サービスが整合しているかを確認する。そのあとでようやく、どうお金を稼ぐかの話になる。「銀行とベンチャーキャピタルでは、大事に感じるポイントが異なります。そのため、話す順番も自ずと変わります」

ベンチャーキャピタルには同時並行で相談

では、実際に資金調達を希望する場合、どのような手順で進めていけば良いのだろう。松本さんは、「ベンチャーキャピタル、1社相談してお断りの返事が来てから次に行くのではなく、同時並行で複数相談するのがベスト」という。

「ベンチャーはお金がどんどんなくなるので、一社に断られてから次、次だと、少ない投資家としか話ができません。投資家からすると、たくさん相談のあるうちの一社ですが、企業からすると振られた時のダメージが大きくなってしまいます。同時に複数社と話をして、相性が合うところと進めていくのがセオリーです」

その後も、企業評価の指標となる資本政策表の見方やバリュエーションの基礎知識など、専門的な内容をわかりやすく教えてもらう講義が続いた。

起業の出発点で考えるファイナンス

最後に、質疑応答をいくつかご紹介する。すでに起業した人、これから起業する人の参加が多かったことから、次々と具体的な質問が出た。


ーー大学生でベンチャー企業に興味があります。やりたいことは決まっていませんが、学生時代に何をしたらいいですか?

学生ベンチャーが立ち上げた、長期インターンシップサービス「Infra」を使ってみてはどうでしょうか。僕も前職の時、利用していました。遠隔インターンのチャンスもあるので、まずは気軽に応募してみたら。

ーー5年前に医療系人材サービスを立ち上げ、今まではファイナンスを考えず、地道にコツコツやってきました。今後資金調達をするとして、上場をゴールとしない場合でも投資が実行されることはあるのでしょうか?

可能性はあります。投資家によってはIPOのスピード等を主眼に置かず、研究に専念している方をより評価する方もいるので、そうした方と出会えるといいですね。

 

ーー株式投資型クラウドファンディングの良さはどのようなところでしょうか?

今後、盛り上がってく分野の一つだと思いますメリットとデメリットを比較検討する事は必要ですが、株式投資型クラウドファンディングを行うとファンが増える事にも繋がります。

起業の出発点で知っておいてほしいこととして開催した、ベンチャーファイナンスの基礎講座。学生や起業家、支援機関の方など幅広い層にご参加いただき、様々な立場から話題は広がった。

今日の学びを、これから起業する時や資金調達を目指す時に活用し、サービスを広げていってもらいたい。

 

 

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