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〜10/20開催 第2回KOIN塾 開催レポート〜

WRITER : 井上 良⼦

 第2回KOIN塾は、一気に秋が深まり気温もぐっと低くなった10月20日、京都経済センター3階「KOIN」で対面開催されました!第1回のおさらいをしながら、my turn理事の福冨さんによる進行のもと参加者同士で対話を重ねていきました。

 まずは前回の感想を共有し合うことから対話がスタート。コロナ禍で加速したパラダイムシフトについて、「環境」「経済」「社会」それぞれの切り口でどういう変化が起こりつつあるのか、新しい単語やキーワードが満載だった前回、参加者の皆さんはどう受け止めたのでしょうか。

 

〈前回の感想〉

・経済が変わっていっていることは頭でわかりつつも、日頃仕事で対面しているお客さんはこれまでの発想のままであることが多い。KOIN塾で学び始めたことを活かしてそのギャップを埋めていくのが自分の役割。

・地域と社会と人の接点となるような町家コミュニティをつくろうとしている。多様な人が一緒に将来を楽しめる場があればいいなと思ったのがきっかけ。上から目線ではなく少しだけ先導していけるように、その準備としてKOIN塾でいろいろ話したい。

・これまでは目の前にある仕事をこなすのが日常だったが、my turn 塾やKOIN塾に参加し始めて、仕事ではなく自分を活かして動く「好きな活動」と捉えるようになった。これからどうしたいかを、家業を経営している家族と一緒に考えていくうちに視野が広がってきた。今後の塾を通しても新たな自分に出会えることを期待している。

・子どもが小さいのでコロナ禍になって会える人が限られ、人との関わりについて考えることが増えた。周りを見ていても孤独が増えている印象。最近友達が近隣に住んでいるエリアに引っ越したが、昭和の時代のように地域のみんなで助け合いながら子育てをする環境になり始めている。

 

 経済や社会といった大きな問題を、参加者の皆さんそれぞれが自分の生活や仕事に引きつけながら内面と対話し、自然に「これからの自分」を考え始めていることが伝わってきます。

 福冨さんからも、「社会や環境の変化が起きる時、どうしても現状から目を逸らしてしまいがちですが、まずは今を受け入れ、社会の温度感や流れを感じ取って過去に捉われず自分を変えていくことが大事だと前回お伝えしました。その柔軟性は、新しい自分に出会って行動しながら自身を成長させるためにも、多様な人とのコミュニケーションにとっても、重要になってきます。」とコメントがあり、話題は「選択や行動が未来を創っていくこと」へ。

 

 例えば、1990年代にイギリスで提唱された「エシカル消費(消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと)」。日本でも最近になって耳にするようになりましたが、モノを買うという私たち一人ひとりの選択によって、企業も社会全体も変わっていく。政治や行政など誰かが変えてくれるのを待つのではなく、人と地域、社会のことを考えた時に望ましいと思う方向に、まずは身の回りの自分の選択や行動を変えていくことの力を信じたいと思えてきます。

 ただ同時に、福冨さんの話の中では心配な動きが起こっていることも指摘されました。エシカルやSDGsが広まりつつある一方で「SDGsウォッシュ」「グリーンウォッシュ」という見せかけの問題があるということ。実態がないにもかかわらずSDGsに取り組んでいるように見せかけたり、企業価値の向上やブランディングのために、SDGsをポーズとして利用してしまうことを指しますが、まさにイギリスでは、企業の環境対策における表現に関する指針を示したガイドライン「グリーン・クレーム・コード」が先月制定されたと言います。

 無作為に抽出したウェブサイトのうち40%で、裏付けがないのに環境に配慮していることを謳って消費者に誤解を与えかねない表現が見られたことがガイドライン策定のきっかけだそうです。企業だけの問題ではなく、突き詰めれば意思決定をする人間の倫理観の問題として、きちんと実態を伴う選択になっているのか、将来を担う子どもたちに恥ずかしくない行動ができているのか、私たち一人ひとりの生き方が問われていると感じました。

 

 続いて盛り上がったのは「共創にとって大事なこと」について。

 前回のキーワードの一つ「共創」は、お客さん(消費者)と線を引かないモノづくりや業界の垣根もいい意味で壊して新しい価値を一緒に生み出していくことを意味していますが、参加者からは

 

・お客様と線を引かないことは、これまでの価値観だとなかなかできない。もっと親身になれる接し方や、相手の気持ちを引き出せるような関係性が大事になってくるのでは。その関係性を取り除いたときに人間どうしの付き合いができるのかも問われそう。

・(現在の家業で)お客さんの言いなりではなく、言いたいことを言い合える関係をこれから大事にして活動していきたい。

・垣根を取り払うことは一人ではできないのではないか。これまでになかった事柄に取り組むには勇気が必要。

 

 という率直な声が出てきました。ここで例として紹介されたのが、my turnと地域企業さんとのコラボ事例。なんと商品はその日に出来上がってきたばかり!形が不揃いというだけで廃棄されていた本真珠のパウダーを使って、伝統の和のお菓子を新しい形で継承するnanaco plus+さんとともに手づくりされた真珠のような飴がリサイクル可能なガラス瓶に詰められています。京都の伝統的な飴文化と廃棄されていた本真珠に再び価値を見出すという想いが込められているそう。

 

 

 個人や1社だけではできないことも、想いをもってつながることで新しい価値を生み、プロダクトを通して世の中にメッセージを伝えていく。そんな事例に触発されて参加者の一人から共有された「町家の改修プロセス」のエピソードがさらに印象的でした。改修のプロセスに関わるすべての人(発注主、設計士、大工さん)それぞれの視点が入ることで妥協せずに高め合うチームワークが生まれ、みんなが愛着を感じられるモノづくりになっているとのこと。複眼視点をもちながら、モノの先にある社会にとっての大きな意味を共有していくことが共創で大事なのでは、という気づきの連鎖が起こった時間でした。

 

 前回の学びをベースに自分自身と向き合い、参加者と対話を重ねることでさらに学びが深まっていった第2回KOIN塾の終盤。「こんなにたくさん感想や意見共有を求められるとは思っていなかった」と漏らす参加者に対して、対話の合間にコメントをしていたmy turn代表理事の杉原さんが返したのは、「話すことが1番のインプット。そして、自分の言葉と行動で楽しそうに伝えることで徐々に広がり大きな社会の動きになっていく」という言葉。my turn では、周囲の人や社会の声との対話を通じて視点が増え、可能性の幅も広げながら中身と外側の「トーン&マナーが整っていく」と表現しているそうですが、創りたい未来に向けて多様なメンバーと共通点も違いも尊重しながら対話を重ね、偶然の出会いが仲間同士の安心感につながっていくことで、まさに参加者のトーン&マナーが整い始めた時間だったと感じました。

 

 次回第3回KOIN塾のテーマは「在り方が問われる時代の到来」。どんな変化のプロセスになるのか、今から楽しみです。次回もどうぞお楽しみに!

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