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〜1/19開催 第5回KOIN塾 開催レポート〜

WRITER : 井上 良⼦

 新型コロナウィルスの感染拡大を受けて、オンラインで開催された第5回KOIN塾。常連の参加者に初参加の方も新たに数名加わって、いつもより少し新鮮な雰囲気の中、どのような想いでここに参加しているのか、自己紹介を含めたチェックインからスタート。

  • 建築事務所に所属しながらツーリズムの切り口で地域と関わっていきたい方
  • 新しい法人を設立し、KOIN塾での学びも反映させながら経営理念をつくられた方
  • 子育てがひと段落したことで、住んでいるまちに多様な人と出会う場を生み出したい方
  • 「自分を活かして関係性をつくる」ことに共感し、10年間かかわってきた地域を卒業するタイミングで自分の中の整理をするために参加された方
  • KOIN塾で「サーキュラーエコノミー」というキーワードに出会い、地域でコンポストのコミュニティに参加し始めた方  などなど

 今回の「自分と人と地域の未来」というテーマのもと、自分自身と地域との関係性を創造しながら、よりよい社会をつくり出すプロセスを探究する時間が始まりました。

 はじめに講師の福冨さん(一般社団法人my turn理事)から前回までの振り返りも含めて共有されたのは、社会や価値観の変化について、幕末のような大きなパラダイムシフトが起きているということでした。副業やフリーランスの広がりに伴い、組織のあり方も多様化し垣根がなくなっていること、仕事の単位も終身雇用制度を前提にしたメンバーシップ型から、明確化した職務内容に応じて採用するジョブ型へと変わりつつあること、そして、2020年のダボス会議(世界経済フォーラム)のテーマとなった、「ステークホルダー資本主義」に現れているように、生産性や効率性の価値観から、多様性と共創による創造性へと経済のあり方もシフトしていることなど、あらためて大きな時代の転換期にいるのだと、その場にいた参加者全員が実感しながら聞かれている様子でした。2018年にダボス会議の日本支社が開設されたのも、日本の「三方良し」の精神が見直されたからだと言います。

 時代の大きな変化が生まれるとき、忘れ去られたかに思える元来からの価値観に再び光が当てられたり、原点回帰したりすることは往々にしてありますが、単に昔に戻るだけではない、古くて新しい私たちの拠りどころは、どのように持ち直したらよいのでしょうか。

 そのヒントにもなるのが、次に福冨さんから投げかけられた人と人、人と企業、人と地域など、すべてにおいて大切なのは「つながり」であり、自分との間に「境」を作らないということでした。これまでのKOIN塾でもたびたび触れられてきたのですが、共感の関係性でつながっていくためには「自分を知る」ことから始め、どんな想いで未来に向けて何を大切にしていきたいか「プロセスをシェア」するということがポイントです。

 ここで参加者から、「”境”をつくらないことの大切さを実感しつつも、職場とプライベートを完全に分けている人もいる。そのような人に対してはどうしたらいいのか」という質問が出されました。福冨さんによると、まずは自分たちが「境」をつくらない姿勢で伝えていく“太陽戦略”(とmy turnでは呼んでいるそうです)によって、じわじわと変化を生み出していくのだそう。

 何よりも、自分たちが“ゲーム感覚”で面白いと感じることを楽しみながら発信していると、向こうから近づいてもらえるのがミソのようです。仕事になるかどうか、ビジネスライクな関係性ではなく、営業をしなくても「一緒に面白がる」関係性から始め、その輪が広がった先にそれぞれの想いを掛け合わせた形としての活動やビジネスが共創されていく。そんなプロセスが思い浮かびます。

 「プロセスシェア」は、筆者である私自身もmy turnと出会って共感したアプローチなのですが、一言で言うならば、未来に向かって、喜びを分かち合うためのコミュニケーション手法です。過去だけでなく、現在そして未来のプロセスまでを共有することが共創の一歩になります。

〈プロセスシェアのポイント〉
*どのような想いをもってどのような過程で今に至っているのか
*これからどんな未来を描き、どんな気持ちでどう行動していくのか

※「プロセスシェア」にさらにご関心ある方は、ぜひこちらの記事もご覧ください。

 対話の終盤は、「自分を知ることを自分だけでやるのは難しそう。関係性の中で育んでいくこと?」「自分の想いや共感を起点にするとしても、独りよがりでも、気の合う仲間だけの動きだけでも難しいのでは?多くの人が望んでいることを察知する力も大切になりそう。」「自分がつくりたい憧れる未来がここにあると感じて、感激している。ただ一方で、実際にどのように現実的に進めていったらよいのか難しさも感じている。」など、次々に参加者のコメントや質問が出され、希望と疑問が混ざり合うような時間に。

 ここまで読んでくださった読者の皆さんはお気づきでしょうか。さまざまな仕事や人生のフェーズをもつ参加者の皆さんが、現状に対して何かしらの違和感を携えながらKOIN塾に参加し、共通のバックグラウンドもないメンバーどうしにもかかわらず、気がつけば公私の境目なく「私たち」がつくりたい未来の話をしていることに!そう、既に「これからどんな未来を描き、どんな気持ちで、どう行動していくのか」自然と未来へのプロセスが始まっているのです。

 いよいよ残りの回が少なくなってきましたが、この続きは、次回KOIN塾のダイアログで。次回もどうぞお楽しみに!

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