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第3回KOIN塾 開催レポート

WRITER : 井上 良⼦

早くも第3回となるKOIN塾は、ロールモデルゲストとして坂口絵美子さんをお迎えし、参加者での対話を深めるダイアログが開催されました。前半では、坂口さんの経験談を共有いただき、講師であるmy turn理事/ディレクターの福冨さん(トミーさん)my turn代表理事の杉原さんとのクロストークから始まりました。

大学卒業後、鉄道系会社で総合職として勤務している坂口さんは、2人目のお子さんの育休中だった2年前、西京区がmy turnと共催した「みらまちスタートアップ塾*」に参加したことをきっかけに、ウェルビーイングな生き方・働き方を実践されています。

*みらまちスタートアップ塾」は、行政と市民が協働しながら市民がやりたい活動を支援する「未来の西京まち結び~みらまち結び~」事業の一環として、「西京区で自分を活かして生きる」ことをテーマに開催された全5回の塾です。

2回までのKOIN塾では、変化しつづける社会を知り、自分で外側のことをどのように解釈していくか、自分を活かして働くために重要な「セルフアウェアネス(自分を知ること)」の大切さについて理解を深めてきました。

坂口さんは、コロナ禍での育児や働き方の変化の中で、どのように自分の可能性を発見し、どのような形で自分を活かした働き方・生き方を実践されているのでしょうか。トミーさんからの問いかけに応える形でトークが進んでいきました。

 

(福冨さん)「みらまちスタートアップ塾」のワークで、とくに印象的だったことはどんなことですか?

(坂口さん)ネガティブ思考、ポジティブ思考はよく聞く考え方だと思うのですが、第3の軸として「自然体思考」という考え方を知れたことです。コロナ禍で子育てをしていた中で、物事の捉え方が広がったキーワードでした。
私の場合は、自然体思考で自分の素直な気持ちと向き合って、何がやりたいかを考えたとき出てきたのが「ボードゲームの教育への活用」だったんです。その思いに対して、塾の参加メンバーからの問いかけやフィードバックがあったことで、やりたいことの解像度が上がっていきました。これまで自分の中に潜在していた関心について「私を通じて外に届ける機会」を得た感覚でした。

 

(福冨さん)自分の内側で思っていたことを実現させる一歩目を踏み出した瞬間でしたね。人と交わることでどう変わっていったのかについて、もう少し聞かせていただけますか?人から言われて自分自身について発見したことや気づきはあったのでしょうか。

(坂口さん)みらまち塾の参加者の方から協力を申し出てもらったり、後押しがあったり、自分がしたい方向を強化してくれるサポーターがいてくれたことで、まずはオンラインでボードゲーム体験会を小さくやってみることができたと思っています。そして、実際にやってみて発信してみると、いろんな反応があり、「自分のやりたいことが誰かのためになるという実感」も得られました。
周りからは「実行力があるね」「仕事もプライベートも頑張っているね」と言われるようになったのですが、自分自身は全く苦ではなく、楽しんでいるだけなんですよね(笑)。

 

(福冨さん)まさにそれは「モチベーションとドライブの違い」だなと思います。外的要因からくるモチベーションと異なり、ドライブは自家発電です。自分の内側から沸々と湧き上がってくるものに突き動かされる場合は、楽しみながら継続することができます。
子育てをしながら仕事もプライベートでの活動もされている中で大変なことや楽しいことはどんなことですか?

(坂口さん)大変なことは、子どもに関する急な対応が必要になるといった、予測できないことが増えることでしょうか。コロナ禍で保育園が休園することもありましたし。自分だけの時間が減ってしまうことは事実なのですが、それも含めて楽しもうとしているし、実際に楽しいですね。予定通りに物事が進むことよりも、予測できないことも楽しめるというか。そのことを子どもに教えてもらっているような気がします。

(福冨さん)すべてゲームのように楽しんでいる印象です。ゲーム感覚でいると大変なことも一つ一つクリアしていけますよね。

 

(杉原さん)私からも伺いたいのですが、フルオンラインでのみらまち塾は初めての試みで、初対面の方もいましたし、不安に感じることもあったのではないかなと思う中で、全ての回が終わってみて何か感じたことはありましたか?

 (坂口さん)確かに初めはどんな方がくるのか分からない中だったのですが、my planning(目標の相互共有)などを通してお互いの内面や考えを少しずつ知っていく中で助言も増えていき、「参加者同士でサポートし励まし合うことで、目標の実現は近づくんだ」と強く感じました。

(杉原さん)少しずつ自分の感情を出して共有し合うことでつながった関係性は壊れないですよね。たとえオンラインであっても関係性を築くことはできますし、地域の中の新しい魅力や可能性を再発見することにもつながったのではないかと思っています。

 

(福冨さん)自分自身の思いや未来に向けたプロセスもシェアするというのは、どう未来を描いて一緒に創っていけるかということなんですよね。ただ目の前のことに取り組むだけではなく、そこがあるかどうかは重要です。では最後に、坂口さんはどんな未来を描いていますか?

 (坂口さん)これまで2年間活動して、これからも自然体でありたいですし、ボードゲームのポテンシャルをもっと活かしたいと思っています。ボードゲームを軸にすることは決めていますが、さらなる可能性を含め活かせる領域をレーダーで探索している状態で、まだまだ知らない世界もたくさんあると思っています。
たとえば、現在友人と一緒に、育児と仕事の両立を疑似体験できるボードゲームの開発をしているのですが、これからは私だけの思いではなく「誰かが発信したい思い」についてもボードゲームを通じて届けていきたいです。実際に体験することで物事の捉え方が変わるのがボードゲームのポテンシャルだと思っています。

 

(福冨さん)難しいことも、ボードゲームでは楽しさを交えながら伝えていける点がすごいですね。自分を押し出すのではなく共感を生みながら広げていっているのがすばらしいです。そして、大人も子どもも年代関係なく楽しみながら仲良くなれるというのは、これからのコミュニティの大切なあり方だと思います。

あっという間のトークセッションは、会場の参加者との質疑応答で締めくくられました。

仕事と家事の両立を実現していくために心がけていることやドライブのかけ方についての質問に対しては、坂口さんより「誰かと約束してしまうのがいい」との回答が。約束した相手を想う気持ちをエネルギーに変えられ、また、色々な人に試してもらって多様な観点からフィードバックをもらうようにしていることや、周りから少しずつサポートしてもらうこともドライブになっているとのことでした。

また、自分の新しい挑戦に参加を呼びかけられる心持ちが知りたいという質問に対しては、「そのときに集まってくれた人とできる形で一緒にやってみる」という気持ちだそうで、「お互いしんどくないように、話している中で共通点や関心がキラッと光れば声をかける」という坂口さんの心配りも感じられる素敵な回答が印象的でした。

場も温まった後半は、参加者がペアになり、①自己紹介や自分の想い、②生涯をかけて何がしたいのかを対話し合うワークショップ。初対面の人に自己紹介をする機会はよくある中で、“生涯をかけて”やりたいことや自分の想いを伝えるのはハードルが高いはず!なのですが驚くほどにお互いの内面を開示しあって対話が盛り上がっていました。

2回のKOIN塾で出された宿題(「自分を知るワークシート」)に取り組んできた成果でもあると思いますが、前半のクロストークに触発されて、また自分の想いにペア相手からのフィードバックコメントが投げかけられたことで、まさに参加者の皆さんの心にドライブがかかった様子が見てとれました。

社会を知って「自分を知る」ことから始まり、会社員、行政職員、学生、主婦といった普段の肩書きにとらわれない内面や感情を共有し、創りたい未来のプロセスを描いていくこと。それが著者も研究している、「わたし」を起点にしたソーシャルイノベーションの大事な、力強い一歩であることを参加者の皆さんに教えてもらった第3KOIN塾。

次回は「セルフコンパッション」がテーマです。次回のKOIN塾もどうぞお楽しみに!!

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