READING

第5回KOIN塾 開催レポート

WRITER : 井上良子

5KOIN塾は、ロールモデルゲストとして樺井好美さんをお迎えし、参加者間で対話を深めるダイアログが開催されました。冒頭では、講師であるmy turn理事/ディレクターの福冨さん(トミーさん)より、前回までの講義の振り返りとなるポイントの説明があった上で、今日までの1ヶ月間でセルフコンパッションを実践した気づきなどを対話する時間から始まりました。

自分自身を知り(セルフアウェアネス)、思いやりをもって向き合うことで自分を愛する=受け入れる(セルフコンパッション)プロセスにおいて、どのような発見や経験があったか、ペアになった参加者同士で対話し、場も温まったところで樺井さんがご登場。もう一人の講師であるmy turn代表理事の杉原さんとは前職の元同期で「時代と呼吸の合った働き方・生き方」をされているという樺井さんは、二人のお子さんの産休・育休を経て、2年前から月10日の本業(企業での短時間勤務)と月約64時間のフルリモートでの副業(事務)というバランスで働かれています。

実は樺井さんに副業の仕事を依頼したのは杉原さん。なぜ樺井さんに事務の仕事を依頼したのか、その背景の説明があった後、自然な流れでトークが進んでいきました。

 

(杉原さん)これまでの仕事柄パソコンを触ったこともない樺井さんに事務の仕事を依頼したのは、樺井さんがいつも変化を恐れず、新しいことへの好奇心をもっていたから。組織の中にいるだけでなく、子育てを経て新しい働き方・生き方を模索していた段階だからこそ二人三脚で私もサポートしながらお願いしたいと思ったのですが、コロナ禍で目に見えるダメージもあり業界的にはマイナスな状況の中どのような思いで新しいチャレンジをしたのでしょうか?

(樺井さん)チャレンジ精神があったというより、もともと計画的で備えておきたいタイプ。周囲とも副業の時代がくることは話題にしていて、私自身も何か役に立てることで時間を使えるといいな、とは何となく考えていました。それがたまたまコロナによって環境がガラッと変わったときに、条件が揃うとはこういうことかと思ったんです。元々の性格からすると準備できていないと動けないタイプでしたが、ちょうど副業を考え始めたタイミングで、まさに自分が蒔いていた種が芽吹いたような感覚でした。制限の多い本業なので、兼業が見つかったのはラッキーだと思います。

(杉原さん)海外に飛ぶと数日帰らないキャビンアテンダントにとって、時間と場所が固定された仕事はできないという制約があり、今までやってきたことを変えるのは難しいため、辞めるしかないと思う人が多いですよね。樺井さんの場合は、「子どもたちに両親が対等に働いている姿を見せたい」という思いや「働き方・生き方を変えたい」と周りに伝えていたことが大きかったと思います。外部環境が変わったときに大事なのは、組織の中にいながらも個々人の感情(自分はどう生きていきたいか、何を大切にしていきたいかなど)や心の声を捉えること。仮にうまくいかない状況であっても、まずは受け入れて視点を転換できるかがポイントです。

(樺井さん)大変な状況も面白がった方が得。同じ結末に向かう道中で、得るものが違ってくると思っています。好奇心に蓋をしないことでしょうか。

(福冨さん)ここまでお話を伺っていて思うのは、樺井さんは常に気づきを言葉にしている。多くの人は外側で起こる現象ばかりに気をとられがちなところ、自分の感情に気がついているということです。まさにコンパッション。そんな樺井さんにビフォアフターを聞いてみたいと思いました。兼業を始める2年半前と今とで自己認識として変わったことはありますか?


(樺井さん)すべて変わったといえば変わったのですが、気持ちの面でいうと「何があったとしてもその都度自分で考えて自分が行きたい方に行けばいい」と思うようになった点です。様々な変化が同じ時期に重なって実際は大変だったものの、周囲にも伝えながら解決していきました。頼まれたことや最初に言われたことをそのまま100%やれなくてもいい。状況を整理して、うまくいくように調整することが大事かなと。自身の力だけではなく、誰かの言葉を介して整理することもあります。自分一人で抱え込んで考えなくなったことも変化です。


(福冨さん)「今を生きる」というのはなかなか難しい。どうしても不安に負けて、過去と未来のことに囚われてしまう人が多い中で、樺井さんは場面場面の「今を生きている」感じがすごいですね。


(杉原さん)同感です。過去に捉われないことですね。私自身もキャビンアテンダントから現在のコミュニティデザイナーという振れ幅の広い肩書きにも表れているように、何でも面白がれる自分のマインドを生かしながら捉われずにやってみたら、外からも話がくるようになりましたし、自然体で人に役に立てるかもと思えたんです。樺井さんにも良い循環が見て取れますね。


(樺井さん)その時々で求められることに応じながら、その中でもやりたいことや芯をもつことが大事かもしれません。私の場合は仕事が忙しくても家族をないがしろにしないなど、「これさえあれば他のことはどうなっても大丈夫」と思える基準はもっていました。


(福冨さん)最近企業や経営においてもキーワードになっている「パーパス」という言葉がありますが、「こうありたい」ではなく、自分の価値観を自問しながら「こういうあり方」だと自分自身で認識できることが大事なんです。


(樺井さん)実は今また、あらためて新しい働き方・生き方をリアルに考え始めていて、それというのは、母に何気なく問いかけられた「定年まで働くの?」という言葉がきっかけでした。いつまでも社会に求め続けられるわけではないことに気づかされ、キャビンアテンダントの仕事について、どのポイントで好きなのか要素に分解して考えてみたんです。
そうすると、社会人になるまでに経験してきたアルバイトの仕事を振り返っても、お客さまに何かを買ってもらうためだけに優しく接することはしたくないという想いが根底にあることに気づきました。単にモノを売ることより「お客さまの求めていることに応じたい」と思ったんですね。子どもと家でゲームをすることにも学びがあるように、せっかくやるなら全力で楽しむこともポリシーになっています。


他者や社会と対話し、状況や社会が変わる中で一つ一つアウトプットしながら自分らしさを見つけてきた樺井さん。思いがけない経験や他者からの投げかけによって「意外な自分」に気づいたこともあったのでしょうか?筆者からも質問してみました。


(樺井さん)いまやっている兼業の仕事がまさにそういう経験です。実際にやってみて業務自体は苦手だったとしても仕事の進め方などにおいて自分の特性に気づきます。また、本業の会社では、職場で担っている役割として、いろんな立場の人と話す、俯瞰して見ることができる立場だったため、自分自身や物事を客観視する良い機会を得ました。そして現在は、その役割を終えたら次はどんな自分で何ができるかなと、考え始めています。


(杉原さん)あらためて樺井さんから、どんな状況からでも始められること、自分で機会をつくっていくことの大切さを学びました。自分を受け入れて周囲や社会と対話しながら、次の芽につながる種まきをすること。


(福冨さん)頭で考えるだけではダメで、実際にアウトプット=行動するからわかってくることがある。動かなかったら選択肢も見えてこないですね。自分を愛するということは自分の今後はどうなっていくだろう?とワクワクしながら自分に好奇心をもつこと。まさに樺井さんは、備える性格をいい方向でベースにしながら「自分自身のマーケティング」ができていると感じました。


参加者の皆さんも引き込まれるように聞き入っていたゲストトークはあっという間に終了。最後の時間は、これからどんな働き方をしたいか、どんな仲間とどんなプロジェクトを仕掛けていきたいかを自由に対話するダイアログで締め括られました。

話し手は話しながら自分の気持ちや考えが整理されていき、それを受けて感じたことを聞き手から伝えてもらうことで、自分だけでは気づかなかった視点や考え方を得られる。対話による相互作用で重層的な時間を過ごした参加者同士で、アフタートークも盛り上がった第5KOIN塾。

折り返し地点を過ぎ、残すところ2回となりますが、次回のKOIN塾もどうぞお楽しみに!

メンバーページ