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第7回KOIN塾 開催レポート

WRITER : 井上 良⼦

ついに最終回を迎えた今年度のKOIN塾。前半では、前回までのKOIN塾の内容を少し振り返りながら、講師のトミーさんこと福冨さん(my turn理事/ディレクター)によるポイント解説からスタートしました。前回のテーマである「セルフイノベーション」にとって、一番重要な「変化適応力」は、単に変化にそのまま対応するのではなく、変化に対面したときに自分なりに考えて選択することがポイントでした。そのためには、変化に流されたり、他者や過去の自分等にとらわれ過ぎたりせず、ぶれない自分の軸をもつこと、そして、自分の本質を受け入れて自分を信頼することが出発点になります。
トミーさんはそのループを、ホップ・ステップ・ジャンプとして位置付けて説明します。

〈ホップ〉では、自分自身を知ることで本質を見極め、自己受容により自分を信頼する。
〈ステップ〉としての「変化適応力」では、社会の流れを感じ、人との対話を通じて人への思いやりをもつ。
〈ジャンプ〉においては、新しい自分から「価値創造」をしていくことで、自分を活かして生きるという流れです。

そして、振り返り解説の最後には、1回限りで終わらない常に循環していくこのループを繰り返しながら“自分らしく”生きていく上で、これから一番大事なのは「関係性」だということも強調されていました。それは、社内外の人間関係など人との関係だけでなく、人間と自然の関係も含まれ、またお客さんとも対話しながらモノやサービスをつくっていく「共創」のあり方まで及びます。

続いて今回のロールモデルゲスト・中村あゆみさんのトークは、杉原さん(my turn代表理事/コミュニティデザイナー)との対話形式で進んでいきました。中村さんは、my turn2020年に法人化する前から地域活動で出会っていた仲間で、現在は「空間と心の余白をもつことの大切さ」を軸に活動されているとのこと。

 

(杉原さん)では早速、ご自身からも自己紹介をお願いします。

(中村さん)はい、皆さんはじめまして。私は個人事業主として「shunobako」をmy turn lifeより社名変更し、今年の1月に再スタートを切ったところです。3人の子どもの母親でもあり、結婚を機に10年近く専業主婦をしていた中で社会とどうつながればいいのか、自分の人生を考えたい、とmy turn塾で2年間学んできました。
そして、塾で学んだことを踏まえて自分の活かし方の軸に「暮らしを整えること」を据え、整理収納アドバイザーとライフオーガナイザーの資格を取得し、現在に至ります。

(杉原さん)専業主婦の期間が長く、そもそも不自由なく生活できていた中で、なぜmy turn塾に入って学んでいこうと思ったのですか?

(中村さん)専業主婦として充実した生活を送っていた反面、子育て以外で人の役に立てていない感覚があり、自分が社会とつながっていないこと、自分の活躍する場がどこにもないことにモヤモヤを抱えていました。

my turn塾では、仲間とつながる大切さを実感しました。一人で悩んでいても何も解決しないですし、他のメンバーから刺激を受けながら自分の可能性にも気づくことができる。まずはそれだけでも自分にとっては大きな1歩でした。

(杉原さん)それはとても勇気がいる1歩ですよね。ちょっとしたきっかけで、自分の可能性を信じることができて、小さな可能性にかけたという感じでしょうか。

(中村さん)そうですね。これまでは子どもを通してつながる友達ばかりで、常に子どものことを考えた時間の使い方だったのが、自分が主役の時間といいますか、自分のために時間を使っていいと思えたことは大きかったです。

(杉原さん)仲間とその向こう側ともつながった感覚だと思うのですが、その関係性はどうやって紡いでいきましたか?仲間うちだけでの楽しさではなく、その先ともつながることで見えた景色があったのではないかなと。

(中村さん)塾の中でこれまでどれだけとらわれていたか、自分の思い込みに気づいたんですね。今までやってきたことの延長線でしか発想できていなかったのが、仲間と学び合うことによる「発見の連続」で、時間をかけながら自分を知ることで自信がついていきました。これまでの延長線ではなく、新しい自分から発想するようになり、この人とつながったら、次はこういうこともできるかも、とアイデアが広がっています。

(杉原さん)どんな人でも経験を積んでいるからこそ、マインドセットを変えるのは難しいと思うのですが、自分の“とらわれ”を外すときのコツみたいなものはありますか?

(中村さん)自分の立ち位置を俯瞰して見ることかなと思います。多様な意見をもっている人の中に飛び込むことで、思い込みに気づいて客観的に自分を捉えることができるようになりました。思い込んでいた自分と新しく見つけた自分との狭間で、少しずつ過去の“とらわれ”を外して新しい自分を受け入れていった感じです。

(杉原さん)そんな中で、自分が大事にしたい価値観やキーワードが出てきた背景を伺いたいです。自分が思っていることを伝えることの大切さというか、自分の価値観は仲間どうしであっても言わないと伝わらないと思うので、「こころの豊かさ」というキーワードはどのように生まれたきたのか、教えていただけますか?

 (中村さん)「こころの豊かさ」というのは、まずは自分を大切にすることだと思っていて、自分の感情を大切にして「自然体でいること」が心の豊かさにつながるので、妻や母親という役割からの自分ではなく、本来的な本当の自分に戻れたのが大きかったと思います。これまでは感情を置き去りにして思考と行動だけだったのが、(感情をベースにした)自然体になれる思考回路を(my turn塾で)学びました。

(杉原さん)「こころの豊かさ」は数値化できないですし、人の数だけ定義があると思いますが、時代の変化や社会の温度感をどう感じながら、どのように広げようとしていますか?

(中村さん)自分自身を振り返ると、子育て中など大変なときに助けられたのは、身の回りや暮らしが整っていることだったんですね。そこから、整えることは周りや環境の変化に振り回されずに「自分を発信する土台づくり」だと信じていて、片付けること・整えることが目的ではなく、自分の人生を豊かにするための土台づくりとお伝えしています。

まだまだ世の中では、片付けと人生は別物ととらえられがちだと思いますが、別枠ではなく、ライフスタイルの一部にしていきたいです。整え方に正解もないですし、変わっていってもいいもの。雑誌に載っているような完璧な状態を目指す必要はなく、自分が心地よく感じる手段なので、生活の中に自然な流れで組み込むことで「人生の土台づくり」と思ってもらえるように発信していきたいと思っています。

 

ここまでの対話を聞いていたトミーさんから、「自分の気持ちをベースにするという、一番大事なところを掴んでいる」とコメントがありました。AI等のデジタル化が進む社会で、これからますます人間の感情が大事になってくる中、役割を外して「自分の内側の声」を聞いているからこそ、以前と比べても変化を恐れなくなっている様子が見てとれるそう。

最後にトミーさんから「今の(自分を動かす内発的な)ドライブポイントは?」と投げかけられた中村さんが、「自分で舵を切ったことが何につながっていくのか、先の社会も想像しながら自分が描いた全体像(マーケティングマップ)に立ち返ること」と、会場にも実際のマップを示しながら説明すると、参加者の皆さんもさらに熱心に聴き入っていました。

最終回ということもあり、最後に参加者の皆さんからお一人ずつ、自身の変化や気づき、感想などを全体にシェアする時間が設けられました。以下抜粋してご紹介します。

 

  • 転職活動をする中で以前の業種に縛られて苦しんでいたが、KOIN塾で学んだことを実践としてチャレンジする中で目線を変えることができた。そして行動した結果、これまでとは異なる切り口から働き始めることになった。
  • 去年3月に定年退職したことを機に参加、若い頃に家庭や会社の中の役割ばかりを優先して置き去りにしてきた「起業への想い」と向き合った。あと10数年もう一度社会に貢献できるのではないかと起業アイデアを膨らませている。
  • 半年間楽しく受講した。結婚・育児後もずっと働いてきた中で、ある日突然、会社を取り巻く環境が大きく変化した。立場が変わったからこそできることを探しているところだが、自分が楽しくてやりたいことと、社員のためにできることを掛け合わせたカフェをつくりたい。より生きやすい社会にしていきたいという想いを再確認できた。
  • 会社員生活を長く続ける中で、起業したいと参加。もともと自己肯定感が低く、周りの目を気にすることも多かったが、今回塾で学んだ「ご機嫌スイッチ」をきっかけに自分自身を振り返ることができ、少しずつ自然体の思考回路に近づけている。
  • これまで他人に認められないと自分に価値がないと思い込んでいたが、KOIN塾を通して他人に依存したマインドをもっていたことに気づいた。自分を大事にした上で好奇心から動くことができたら、変わっていけるヒントを得た気がする。
  • 仕事での立場(店長)、家族の中での役割(嫁・娘)だけで生きてきて、自分の気持ちを考えるよりも誰かの期待に応えなければ、周りに迷惑をかけたくないという縛りがあった。人を受け入れるのは得意な反面で、自分から輪の中に入っていくのが難しいので、KOIN塾で気づくことができた、「自然体」「行動すること」「仲間づくり」を大事に広げていきたい。

 

皆さんのシェアを受けて、トミーさんと杉原さんからコメントがあったように、皆さんが赤裸々なことも含め「本音で語る」姿が印象的でした。最初はそれぞれの参加者に思い込みや過去へのとらわれがあったり、役割としての自分を優先するあまり自分自身のやりたいことが見えなくなっていたり、職場や社会では論理や立場から物を考えることが優先されてきたことで自分の感情と向き合い、自分を知ることから始まった今回のKOIN塾。

半年経った最終回で見られたのは、自分の内側の声に耳を傾け、先のことも見ながら他者と対話し、自分を信頼し始めている皆さんの姿でした。その姿に「新しい自分」への希望と多様な自分を発揮し合う社会の始まりを感じました。

7回・半年間にわたってお届けしてきたKOIN塾レポートを最後までお読みいただき、ありがとうございました!またどこかでお会いしましょう!!

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