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【U35起業家育成プログラム】日本語が上手じゃなくても日本で働ける!? 週28時間でも、働き・起業ができるポイント

WRITER : 西尾 創平

今回の登壇ゲスト、サプラ・シュレスタさんは現役の留学生であり起業家。留学ビザによる就労制限や言語の壁を乗り越えて、勉強と事業を両立されているプロフェッショナルです。
そんなサプラさんに、「日本での起業・仕事」をテーマにお話しいただきました。

 

アルバイトが難しい、ならば「起業」

―サプラさんは、留学期間中にIT企業を立ち上げた経営者でもいらっしゃいます。まずは起業されたきっかけについて教えてください!

サプラ:
他の留学生と同じようにアルバイトをしていたのですが、新型コロナウィルスの影響でアルバイトの仕事が無くなってしまったことがはじまりです。
もともとITの知識があったことと、非対面で行えることが時勢にマッチしていると思い、IT業界に関するリサーチを始めました。日本のIT業界をリサーチする中で、インドでは1週間で終わるHP制作を日本では(当時)3ヶ月もかけて行っていることがわかり、ここに商機があると思い開業しました。

―アルバイトが難しいなら起業というのは大きな決断ですね。ただ、サプラさんにとっては、「起業」が必然的な選択だったというのが伺えます。そんなサプラさんの仕事や物事へのスタンスをお聞きしたくなりました。

 

全てに意味が生まれる

サプラ:
声を掛けてもらったお話は何でも受けるスタンスで、日本語の翻訳やイベントスタッフなど、どんな仕事も受けました。日本で初めていただいたお仕事の報酬は数千円でしたが、そんな私の根本にある考えは、「無駄な時間は存在しない」という事です。
一見意味のない、成長に繋がるかどうかわからないプロジェクトも、将来的に自分にとって良い方向につながると確信していました。イベント運営をすれば、思いもよらないところで素敵な出会いがあるかもしれない。翻訳の仕事をしていると、翻訳に関する大きなプロジェクトが入ってくるかもしれない。そう思い、報酬の大きさに関わらず、できるだけ多くの仕事を受けてきました。その結果、日本社会の常識など、ビジネスにも繋がる価値観を理解することができました。

―まさに修行のような期間でもあるわけですが、この期間があるから日本のビジネス的感覚が養われ、出会いも生まれ、結果として今があるということですね。

 

言語を理解し、扱い、その言語で考える

―日本でビジネスをするということは、言語や商習慣などの違いから大きな壁があったのではと思いますが、どのようにして乗り越えられましたか?

サプラ:
まず、その国の言葉で話すことは信頼関係を築く上で重要なことの1つだと考えています。というのも、ビジネスは「相手の悩み事を解決し、対価をいただくコミュニケーション」でもあるため、相手の立場から見た考えや感じ方によって、何を解決するかわかります。
また、日本語という言語は話せるだけでは不十分で、言葉にならない気遣いも大切だと思います。「相手を気遣える文化」。この文化は世界に通用するものだと思います。学ぶだけでも大きな意味があったと思います。
これ以上、日本語を難しくしないでいただきたい、という思いもありますが。(笑)

―サプラさんが話される日本語に、相手を想う気持ちが表れているのはそういった背景があったからなんですね。やさしい日本語で、やさしい社会が形作られていくことを共に願っています!

 

起業して日本語がさらに上達

サプラ:
私は起業後の商談や打ち合わせの時に、お客様とのやり取りを通して日本語を学ぶことが多くありました。私のために、誤った言葉を指摘していただいた方や、正しい言葉使いを丁寧に教えていただいた方のおかげで、日本語がさらに上達しました。

―そのお客様も素敵ですが、お客様が愛を持って教えたいと思える関係性を築いているサプラさんも素敵です!

サプラ:
ありがとうございます。そういった関係を築けたのは、「お客様をお客様ではなく、先輩と捉える」ことを意識していたからかもしれません。その気持ちを持つことで、「(後輩に)教えたい」と思ってもらえるような関係が築けたのだと思います。だから、後輩のように接してくださったお客様は、色んなことを教えてくださり、中には、受注に必要な要件定義書を書いてくださった方もいらっしゃいます。

―サプラさんの人間力に脱帽です !

 

京都で起業する魅力は「関係性の強さ」

―京都で起業し、働くことで感じる魅力や、起業をされてから見える景色について教えてください。

サプラ:
京都は自然・文化を味わうことができる街です。京都は閉鎖的だとよく言われますが、言い方を変えると繋がりが強いと言えるのではないでしょうか。
例えば、こういう人と出会いたいと思った時に、出会える人の数を京都と東京で比べてみました。東京だと20人に出会えて、その半分の10人ぐらいと仕事に発展しますが、記憶に残る人はさらに少なくなります。
一方で、京都で会える人数は東京より少なくなるかもしれませんが、少ない分はじめから濃い関係になれます。結果として記憶に残る人数は京都の方が多いと思うんです。そうした関係性や繋がりの強さがある街であることが魅力だと思います。

 

大切な人が教えてくれた、成長のための教訓

―最後に、会場の皆さんにシェアしたい、サプラさんが得た気づきや学びを教えてください。

サプラ:
家族から教えてもらったことをみなさんにシェアしたいと思います。母からの教えは、「お金よりも必ず“人”を大切にしなさい」です。そして、父からの教えは「常に謙虚であれ」ということです。
つい、自分がいなければ、この仕事は上手くいかないだろう、と思ってしまうことがあります。でも、それは間違いだということです。自分のことを過大評価せずに、常に相手に敬意を持ち決して驕らない。周りの人を大事にしながら、成長のために努力することを私は大切にしています。
次に今のパートナーからは、常に忍耐力を持つことを教わりました。どれだけきつい状況になったとしても、それに耐えること。このことを常に考えています。辛いことがあっても、今を乗り越えればどうにかなると思っています。
そして、以前お付き合いしていたパートナーからは教訓ではなく、私の長所について教えてもらいました。私が大切にし、磨き続けるべき長所は、話し方や人との接し方です。彼女が自分の長所に気づかせてくれました。大切な人からのアドバイスには皆さんも耳を傾けてください!

―今日はご家族も会場にいらっしゃるということで、最後のお話しは感慨深くお聴きしました。相手を大切にすることが、結果として自分の成長に繋がり、「自分らしさ」を見つけて実現できるということだと思いました。サプラさん、今日はありがとうございました!

 

 

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京都府名誉友好大使/京都大学生
サプラ・シュレスタ氏

京都大学生・工学部物理工学科/機械システム学コース在席。
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歳まで出世地であるインドで生活し、「機械工学を学びたいと思っている」と伝えたところ、「それなら日本に留学したらいいよ」とアドバイスをもらい日本に来日。
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年間大阪大学で日本語を学んだあと京都大学に入学。
在学中にIT企業を設立し、現在ではインドと日本を繋ぐ貿易会社や海外の中小企業向けにコンサルティングを手がけている。
また現在、京都府名誉友好大使に就任。
SDGs
についてのパネルディスカッションを行い、京都と海外をつなぐ架け橋となるなど京都を起点に精力的に活動している。

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