【U35起業家育成プログラム】 はじめは小さくスタート!スモールビジネスの立ち上げ方と辞め方
名の知れた大企業も、はじまりは小さな商売から。大きな物事の始まりも、小さな一歩からスタートするもの。
令和4年 第1回目のU35起業家養成プログラムは、何かをはじめてみたい、起業をしてみたいと思うU35世代に向けて、スモールビジネスの立ち上げ方とその辞め方をテーマに開催されました。
登壇ゲストは、2014年の創業から70以上のスモールビジネス(プロジェクト)を生み出してきた 株式会社MIYACO 代表取締役の中馬一登さん。
今回のイベントでは、「事業で大事なことは、『まずはやってみること』と『終わらせ方』なんです」と、辞め方の重要性も伝えたいと語っておられました。
挑戦し続ける会社MIYACO
イベントは、中馬さんによるMIYACOの理念と事業の紹介からスタートしました。MIYACOは「我がままであれ」をフィロソフィーの根幹に置いた、メンバー一人一人が自分らしくあれることを大切にしたベンチャー企業です。
中馬:「我がままであれ」は、自分勝手な「ワガママ」ではなく、「我が道をゆく」という意味を込めた言葉です。ですが、この自分を貫くことは本当に難しく、自分だけが良いという考えでは上手くいきません。自分の道を進めるためには、周りの力も借りないといけない。周りが協力したくなるような、関西の言葉で言う「えぇやつ」でなければいけないんです。
中馬さんが語る「我がまま」とは、近江商人の「売り手良し・買い手良し・世間良し」の「三方良し」の精神です。ビジネスを進めていくために、自社だけではなく、お客様と世間にも目を向けている中馬さん。一方で、事業をはじめる中核は「売り手」に重きを置いているとのこと。
中馬:事業をはじめる時、メンバーの良さや強みが活きる仕事になるようにプロジェクトを立ち上げ、試行錯誤しながら事業を作っています。僕たちが起業したのも自分や兄弟、家族の幸せを叶えたいという想いからなので、どうせやるなら、やりたいと思えることを仕事にしたいと思っているんです。
メンバー一人一人が、自らの幸せを目指してビジネスをしていることがMIYACOの特徴で、新しいプロジェクトを立ち上げては仮説検証を繰り返し、構想を加えると100を超えるプロジェクトが生まれています。
勢いだけでは通用しないビジネスの世界
数多くの挑戦を続けたから気づいたこととして、「勢いだけではビジネスは続かない」と振り返る中馬さん。ビジネスを継続し育むための2つのポイントを挙げられました。
- 会社としての「目的」を持つこと
- ビジネス自体に「意味」があること
中馬:はじめること自体は、勢いがあればそこまで難しくないですが、その活動を続けていくことの方が難しい。事業をはじめると大変な課題がいくつも訪れ、その度に、『何のために、これ(ビジネス)をしたいんだっけ?』と自分に問いが生まれます。そこで、「○○のためにやっている!」とブレずに答えられるかどうかが継続の鍵になります。
だからこそ、スモールビジネスでも、会社として取り組む「目的」が明確にあることが大事です。お金だけが目的のビジネスだと、他のビジネスでもお金を稼げてしまうので、これもまた続けるかどうかブレが生じます。そのビジネスがどんな期待を果たすのか、存在する「意味」が必要なんです。
「なるほど!」と参加者のメモを取る手が止まりません。
続けて、目的と意味を持ったビジネスの立ち上げ方のポイントとして、3つの要素を挙げられました。
- 自分が何に喜びを感じるのか
- そのビジネスで喜ぶ人は誰か
- どんな困難があっても、そのビジネス続けたいと決断できるか
中馬:僕自身もたくさん色んなことを立ち上げて、辞めたり、中断したりと試行錯誤をしてきました。だからこそ、自分がどんな仕事にテンションが上がるのか、どんなときにバリューを発揮できるのかがわかります。こうして自分を理解した上で、何を成し遂げたいかを考え続けると、本当にやりたいことが見えてくる。それが最後に続けたいと決断できるものになると思います。
立ち上げたプロジェクトの数は、自分とビジネスに向き合ってきた証。はじめないことには、成長もしない。だからこそ、無理をせず小さくはじめてみることが大事だと、中馬さんの経験が証明しています。
次に、ビジネスやプロジェクトの終わらせ方について、「チャンス」を引き寄せるために、丁寧に行うことがポイントだと中馬さんは語ります。
中馬:経営者はその人の仕事の終わらせ方や辞め方をよく観ています。たとえば、投げ出すように辞める人もいれば、関係者一人一人に説明をしたうえで閉じる人もいますよね。1つのアクションの違いだけでも、人となりやビジネスに対する姿勢が伝わります。終わらせ方の姿勢と内容がその人の信頼度やイメージになり、その人に対する判断材料になります。だからこそ「我がまま」だけではなくて「えぇやつ」であることが大事なんです。
たとえそのビジネスが失敗しても、終わらせ方次第で次のチャンスが巡ってくる。「失敗」のカバーの仕方は「誠実な姿勢と行動」。これから起業を考えるU35世代にとって、最高の後押しになった瞬間でした。
その後も、スモールビジネスの立ち上げ方のシェアから、会場の質疑に真摯に答える中馬さん。あっという間に時間は過ぎ、最後のシェアに。国内外のたくさんの情報にアクセスできる時代だからこそと、次の図とともに「やってみる」ことの価値を紹介されました。
中馬:何かを始めようとした時に、ネットで調べると大体のことは既に誰かがやっていて、そのノウハウが手に入りやすい時代になりました。なので、ついつい「わかったつもり」になりがちです。
でも、それを知っているだけで、実際にやってみたことがある人はかなり少ないです。「知っているけど、失敗が怖いからやらない」とか、「既にやってる人がいるからやらない」とか。できるノウハウがあるのに、なぜかやらない理由になっている。これはもったいないことだと思うので、僕は皆さんに「やってみる」ことに拘ってほしいです!
成功事例で溢れる時代ですが、その裏にはたくさんの挑戦と失敗があることを教えてくれた中馬さん。お話しから得た起業のヒントは、失敗を恐れずに「まずはやってみる」、上手くいかなくなったら「誠実な姿勢で終わらせる」ということ。中馬さんの熱いメッセージが次の挑戦者の背中を後押しするエールになった時間でした。
<ゲスト 中馬 一登さん>
1987年生まれ、京都出身。2014年に兄弟3人で株式会社MIYACOを設立。人材・教育事業や観光事業、地方創生事業を手掛け、京都市や舞鶴市と連携し、若手の活躍を推進するプロジェクトなどを多数企画・開催している。京都で活躍する若者のコミュニティU35-KYOTOのプロジェクトマネージャーやダボス会議などで知られる世界経済フォーラムによって任命された33歳以下の若者によるコミュニティ「GLOBAL SHAPERS COMMUNITY, KYOTO HUB」の代表などを歴任。