KOIN塾 自分を成長させるコーチングパートナーの作り方 開催レポート(第2回)
第2回KOIN塾のテーマは、「セルフリライアンス(自己信頼)」。似た言葉で一般的によく聞く「自己肯定感」よりもずっと前から提唱されているキーワードをもとに、今回も講師の福冨さん(一般社団法人my turn理事、以下トミーさん)のレクチャーから始まりました。冒頭で各国の経済的・社会的な指標を比較しながら、トミーさんが早速指摘したのは、日本は圧倒的に他者への信頼度が低いということでした。平均値が約215、幸福度が高いことで有名な北欧ではその倍の420や520などの数値が並ぶ中、日本はなんとマイナス62という信じがたい数値。信頼できる他者が周りにいることで成長と幸福度を両立させている欧米の各国と異なり、社会の閉塞感が強い日本で他者を信頼するためにも自分自身を信頼することが鍵となりそうです。
200年も前にアメリカの哲学者が提唱し、トミーさん自身は10年前に知ったという「自己信頼」の出発点も自分を知ることだと言います。ポイントだと感じたのは、①環境、人との対話、②「いまここ」にフォーカスした自分の本心と向き合うこと、そして③自分の可能性を信じる、という3点でした。トミーさんの言葉を道案内に、一つずつ紐解いていきましょう。
環境、人との対話
自分を信頼するための出発点である「自分を知ること」において、トミーさんがまず強調していたのは、どこで誰と出会ってコミュニケーションするか、ということでした。「自分を知る」と聞くと、自分の内面と向き合って静かに過去を振り返ったり自己分析をしたり、まずは自分自身と向き合うイメージが思い浮かびます。もちろんそのプロセスも大事なのですが、環境を変えると普段は封印していた自分が出てきたり、会話の相手からの指摘によって意外な自分を知ったり、環境と人とのコミュニケーションによって自分を知っていくことがさらに大事だというのです。言われてみるとたしかに、日頃は職場や家庭など固定された環境や対話の相手が多いため、旅先や社外での交流の場など普段とは異なる環境や相手とのコミュニケーションでは新鮮な発見が多いことも思い当たります。「行動することで潜在しているものが引き出される」というトミーさんの言葉にも納得です。
「いまここ」にフォーカスした自分の本心と向き合うこと
自分を知る上で次に大事なのは、「今自分はどう感じているのか、自分の本心と客観的に向き合って確認していくこと」だと、トミーさんは続けます。どうしても人は過去の経験や未来のことに縛られてしまいますが、そうすると「今を生きている実感をもちにくい」のだそう。さらに職場での肩書きや家庭での役割といった社会的な立場、周りとの協調を優先し過ぎるあまり、自分の気持ちを後回しにして行き過ぎると自分を犠牲にする場合があるというのです。大人になればなるほど、自分の本心に気づきにくくなるのかもしれません。
「自分に嘘をついていないか?」というトミーさんからの問いかけにドキッとしながらも、自分のご機嫌スイッチを知っていること、自分をニュートラルな状態にもっていけること、といった自分の本心との具体的な向き合い方の処方箋も知ることができました。
自分の可能性を信じる
自己信頼の出発点としての「自分を知ること」について、3つ目にトミーさんがこれから生きていく上でも一番大事だと指摘したのが、「自分の可能性を信じられること」でした。
何か新しいことに挑戦するとき、できない言い訳はすぐに出てきますが、未知の部分が多い場合うまくいくのか結果が読めず、なかなか自分の可能性を信じることは難しいのが一般的です。そんなときもトミーさんは「ゲーム感覚でワクワクしながら取り組むことが大事」だと言います。失敗することでも自信が生まれることもあるそうで、そのためにも、まずは行動すること。
自己信頼は1回で掴めるものではなく、行動を重ねていき、その結果をリフレクション(反映)させながら螺旋状に高まっていくイメージだそう。ワークス研究所による自己信頼の定義(「現在の自己、将来の自己に対して信頼と希望をもっていること」)にもあるように、今の自分の気持ちを尊重しながら、将来の自己に対しても行動することで「信頼と希望」をもつことが鍵になるのだと感じました。
この図にも示されているように、自分の気持ちや可能性を他者にシェアし、ともに未来への希望として創造していくという、自己信頼を起点にした循環により、常に新しい自分にバージョンアップしていくプロセスとしてまとめられるそうです。(プロセスシェアとマーケティングデザインは次回以降のKOIN塾で学んでいきます。)ここでのポイントは「素直な心」。他者とのコミュニケーションを通して自分を知っていく自己信頼のプロセスの中で、「これが自分らしさ」だと、これまでの自分にばかり固執してしまうと他者や環境から新しい気づきを受け取ることもできなくなります。一見して自分を大事にしていそうな言葉である「自分らしさ」も、自分だけで思い込んで閉ざすのではなく、余白のある状態で緩やかに捉え、他者や環境を通した外からの刺激や発見も取り込んでいくことが大事だと気づきました。
講義の終盤では、「自己信頼」という言葉を提唱したアメリカの哲学者・思想家エマソンの言葉が紹介されました。
信頼こそ、内に秘められた能力を開花させる太陽の光である
内心にひそむ確信を語れば、それは普遍に通ずる
いずれの言葉からも、自分を信頼する一歩である「自分を知る」ことの手掛かりは、内に秘められていて、内心にひそんでいる、すなわち表面には現れにくいものだということが、まず伝わってきます。その上で、トミーさんの「自分だけで花を育てなくてもいい。周りの人と育てていく。そのためには本心をシェアしていくこと。自分をオープンにできることが大事」だという言葉には、勇気をもらえます。ストイックになり過ぎず、リラックスして、まずは自分に愛情を向けていく。そして自分と他者、身近な仲間から社会全体まで、お互いのことをオープンにして本音で語り合うことで、相互に気づきを得て秘められていた自分を育てていく。そんな自己信頼を手にできたら、先行きが不安なときでも、「暗闇の中でも、自分で道を照らせる」という、まさに希望の光のような言葉でトミーさんの講義は締め括られました。
その後は参加者間で仲間として感想を語り合うシェアタイム。第2回の今回が初参加の方も数名いらっしゃる中、講義を受けて①わくわくしていること②モヤモヤしていることを共有し合いました。
〈シェアタイムでのコメント〉
- 初めてお会いする方もいる中、自己紹介から盛り上がりました。講義の内容とは違う事柄についてお互いにモヤモヤすることも共有できた時間でした。
- 音に敏感な人や気疲れしやすいなど、メンバーそれぞれしんどさも抱えながら、これからの強みや可能性にワクワクを感じるという話で盛り上がりました。
- 正直、話が難しかったと感じましたが、煩悩ばかりの自分が感じていることも今の自分が忙しくて疲れているからそう考えたのかもしれないと思いました。(トミーさんのコメント:なぜそう思うのかを深掘りできたらいい。思ったことをやってみたらまた発見がある)
- 会社の中では自分が出せない。何か始めたいけど何から始めたらいいかモヤモヤしているという話が出ました。他方で、これから何か新しいことを始めていけそうというワクワク感も共有されました。(トミーさんのコメント:モヤモヤを出した先に、対話しながら自分を発見することに繋げていけるとよい)
- 普段から本音が言えず、相手からどう見られているか気になります。仕事中にもなかなか同僚とは交流できない状況があります。ワクワクした点は、この場は前進したい人の集まりなので、小さなコミュニティから連携していきたいと感じたこと。
- 自己紹介と活動紹介で終わってしまいましたが、ワクワクしたことは新しいことへの挑戦です。一方で、これまでの経験の中で、うまくいかない時、わかってもらえないという思いでモヤモヤしがちだと思いました。(トミーさんのコメント:やってほしい、わかってほしいという自分の思いだけでなく、相手の気持ちとの接点を見つけていけるとよい)
終了後も残って違うテーブルのメンバーとの交流が続き、初対面の方同士でもすでに仲間の感覚で思いを通わせ合っていた参加者の皆さんの様子から、今年のKOIN塾もますます盛り上がっていきそうな予感です。
次回はトミーさんと一緒に(一社)my turn を立ち上げた杉原恵さんにこれまで3年間の経緯・ストーリーを語っていただく回です。次回もどうぞお楽しみに!