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KOIN塾 自分を成長させるコーチングパートナーの作り方 開催レポート(第5回)

WRITER : 井上 良⼦

早くも折り返し地点を越え、第5回を迎えたKOIN塾。今回は、参加者の皆さんが想いをお互いに語り合い、共感を育むダイアログ(交流会)が行われました。

ダイアログに入る前、講師の福冨さん(my turn理事、以下トミーさん)より、紛争などの出口が見えない社会情勢が続く中で、私たちが小さな単位(家族、仲間、会社)から本音で対話すること、異なる価値観の相手とも違いを認め合った上で関係性をつなげていくことの大切さについてお話がありました。そして、前回のテーマ「プロセスシェア」では自分が過去から未来に向けた想いを共有することで信頼関係と共創を生み出していくことを学びましたが、その直近の事例としてmy turnメンバーでKita Living Labを運営する大塚さんの活動と近況について次のように紹介されました。

 

my turnメンバー大塚さん(Kita Living Lab)のプロセスシェア

  • 人付き合いが苦手で、お母さん同士の友達との間でも話せなかった大塚さんがmy turnに加わって2年経った2022年に大宮交通公園で、「森に遊び、森に学ぶ」をテーマにしたウォールデンマーケットを開催
  • 周りの方も驚くほど活発に活動し、その後もリーダー的存在となる。大宮交通公園の管理会社さんからも年間での開催をリクエストされる。
  • 今年11月に第4回目の開催となったマーケットは、出店者と運営者、そしてお客さんという3つの属性が混じり合う境目のない雰囲気で大盛況。地元住民の方にとってもこれまで接点がなかったファミリー層や若い世代と出会う機会にもなり、この1年大宮交通公園を舞台にまちづくりが広がってきた。
  • 大塚さんはさらに、北区に加えて本格的な畑づくりのため高島との二拠点生活を開始する予定。長年思い描いていた土のある暮らし、自給自足の生き方を着々と実現している。

そんな大塚さんとmy turn塾で対話を重ねてきたトミーさんは、「プロセスシェアの過程で大塚さんは自分が本当に望んでいることにも気づいていき、一つずつ行動していっていた」と振り返ります。セルフマネジメントや時間の使い方も課題だったそうですが、実現したい未来像からバックキャストして仮説を検証しながら少しずつ積み上げていったとのこと。

理想を叶えたいと思ったとき、準備が十分に整ってから動き出そうとしたり、一気に完成を目指そうとしたりして、結果的になかなか始められないことは誰しもよくあるのではないでしょうか。大塚さんのケースから、今はできなくても自分の伸びしろを信じられること、自分の可能性を信じることが「自信」となり、5割か6割の状態でも動き始め、動きながらブラッシュアップしていくことが重要だと気づかされます。

「思っていても自分の中だけに閉じていたら進まない。“勇気をもとう”とするのではなく、やるかやらないか。必要なのは”やる”と決める覚悟だけ。」というトミーさんの言葉が会場の参加者の皆さんにも響いていたようでした。

続いて、いよいよ参加者の皆さんからのプロセスシェア。宿題としてまとめてきた、過去から未来に向けた各自の想いを共有する時間です。発表者が募られ、6名の方からそれぞれの想いと現在地を共有されました。

 

参加者からのプロセスシェア

Aさん

  • 孤立や孤独の問題に関心があり、“片付け”で暮らしやすさにつなげたいと考えている
  • 当初は景観保存のためまちづくりの活動をしていたが、地域での孤立の問題に気づいた
  • 地域活動から離れて結婚、子育てをしていたが、子どもに発達障害があることがわかり、普通のことがなかなかできなかった自分自身も体も壊して入院
  • 家を片付けることで少しずつ住環境も含め、自分を認められるようになった
  • “片付け”が一種の認知行動療法になることに気づき、「その人の特性にあった片付け」を新しいまちづくりの形として広げていきたい
  • 一人ではできないため、支援機関等と連携しながら進めていく予定

Bさん

  • 長年エンジニアとして働き定年退職
  • 仕事の中でもメンタルダウンしてしまう方をたくさん見てきた
  • 本人と家族の人生が変わってしまうような影響がある
  • メンタルダウンする前に支援するための起業を考えている
  • 離職率の高いコールセンターで働く人の声を解析している研究をきっかけに声に着目
  • 自分の発する声をもとに自己認知できるアプリを開発予定
  • 精神科の専門家にも関わっていただき、音楽療法、アート、食事などの多様なメニューを考え、オリジナルのケアにつなげたい

Cさん

  • もともと大学の教職員(産学連携担当)だったが、生命科学(土壌診断)の先生の技術をもとに会社をつくった
  • 自分の思いと違うところも出てきたので会社をやめる過程で自身が前立腺がんにかかり、食の大切さを実感
  • 漢方の養生という考え方を取り入れ、再度自分の会社をつくるとともに、奈良の大学でも勤務している
  • これまで取り組めていなかった農業も始め、五感で農業を体験するプログラムに参加中
  • 生き方としての「農」を探究していき、まだ解は掴めていないものの、やりながら見つけたい

Dさん

  • パーマカルチャーに取り組み、食べること、住むところ、自分の活かし方を模索している
  • 一人娘が結婚し、両親を見送ったので4月から家をどうするか、シェアアウスも検討中
  • 自然の循環、コミュニティに関わることが必要だと実感している
  • とくに小さなコミュニティで横のつながりをつくっていくことが大事
  • 先祖や先人たちがつくってきた基盤を次の世代につなげたい
  • 3月までキャリアコンサルタントをしていたこともあり、障がい者の就労支援移行の仕事を始めた
  • これまでは自分を置き去りにしていたと感じているので、道筋は見えていないが、自分の小さな幸せを積み重ねていきたい

Eさん

  • 内向的で学校にも行かないタイプだった
  • コーヒーやカフェが好きで、コロナ禍で好きなお店が潰れていくのをなんとかしたくて、任意団体を設立し、地元のメンバーで守る活動を始めた(学生中心で20名程)
  • おすすめしたいお店やメニューを紹介する月1回のカフェをしている
  • やっている中で気づいたのは、まだカフェの魅力に気づいていない人にもアプローチする必要があること。
  • そのため、アートと掛け合わせてイベントを開催することもしたが、他府県からの参加が多く、なかなか京都の人が来てくれないのが課題
  • 下京区の補助金も活用しながら地域に開いていこうとしている 
  • 将来はコンセプトショップのような形で実店舗化していきたい
  • 観光向けではなく、京都に住んでいる人たち向けのセレクトショップにする構想
  • 活動をする中で若者の居場所が地域にないことにも気づいた。居場所が地域以外になっている。
  • 上の世代は人に集まるイメージだが、大学生はモノに集まるイメージ
  • もっと地域に若い人が出てまちに愛着をもってもらえたらいい
  • 多種多様な若者が京都で活躍できるまちにしたい
  • アートなど生活に必ずしも必要ないものを大事にしたい
  • 新しいものと古いものが混在している京都から発信していく上で課題は資金面
  • 内向的で上に立つ人間ではないので何をみんなに指示したらいいかなど継続性も問題

それぞれのプロセスシェアに対して、「実際にやってみないとわからない。活動してみて、わかったことを掴めていること(現在地がわかること)が大事。答えを見つけるのではなく問いを見つけること」とトミーさん。たしかに、新しいことやこれまで世の中にないものをつくっていこうとするとき、何が正解かは分からないことが多いものの、問いが見つかれば次の段階に進んでいけます。

そして私自身が感じたのは、行動面(何をしているか、したいか)だけでなく、内面の想いや葛藤など心の動きまでシェアされることで、共感や応援したい気持ちが増すということ。トミーさんの「明確でなくても現時点をシェアすることで膨らんでいく、未来につながっていく」という言葉も納得です。プロセスシェアされた聞き手からのフィードバックや、次につながるヒントを受けて、自分の内側(気持ちや価値観)と外側(社会のニーズなど)との対話を行き来しながら、行動しながら化学変化を起こしていく。

そんなプロセスシェアの価値を実感した回でした。次回はいよいよ、講義としては最後のテーマ「マーケティングデザイン」。次回もどうぞお楽しみに!

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