KOIN塾 自分を成長させるコーチングパートナーの作り方 開催レポート(第6回)
早くも次回に最終回を控えた第6回KOIN塾。今回のテーマは「マーケティングデザイン」です。この言葉自体、講師のトミーさんこと福冨さん(my turn理事)の造語ですが、過去にとらわれずに「今ここ」から幸せをデザイン/スケッチすることを意味するそうで、その考え方と実践例をご紹介いただくトミーさんの講義が始まりました。
ここまでのKOIN塾では、マーケットシフト(社会の変化)を学んだ上で、自分の可能性を信じるセルフリライアンス(自己信頼)を軸に、関係性から生み出す共創の在り方と喜びを分かち合う仲間とのコミュニケーション手法である「プロセスシェア」について、理解を深めてきました。
新しいスタートの年である2024年、他人軸・社会や企業の言葉ではなく、自分の視点と自分自身の言葉で幸せをデザインし実践していくことは、他人任せにせず一人ひとりが手綱を握る時代に重要だとトミーさんは強調します。
マーケティングデザインとは、自分の視点で構想を描き、実践に向かうプロセスの行動計画であり、次の3つのステップで進めます。
①自分が描くvision(未来)をイメージし、そのvisionを起点にバックキャストする
②自分の現在地を認識する
③自分のpurpose(在り方)をベースに他者とワクワクするストーリー(筋道)を実践していく
デザインという言葉から、幸せな未来をイメージして描くところまでがその範囲だと思いがちですが、大事なのは描いた未来に向かうためのストーリー(筋道)を実践していく3つ目のステップまでが含まれているという点です。その点についてトミーさんは、「行動計画まで立てないと、思い描くだけでいつまで経っても動けない。自分のことを知りながら自分にあった行動計画が必要」だと言います。
そして、それぞれのステップにおける実践ポイントについて補足説明がされました。
ステップ①の実践ポイント:
- 未来をイメージすることは、行き当たりばったりの行動にならないために大事
- 細かく描く必要はなく、おおまかなイメージを描くこと
- 自分の視点で構想を創造的に描く際には、社会や業界にある今までの常識や慣習の枠組みから抜け出す視点であること、その視点が自分を軸にしながらも他者や社会(未来社会)にとっても望ましい”三方よし”に基づいていること
ステップ②の実践ポイント:
- 未来からバックキャストして自分の現在地を認識する上では、他者と対話することで自分の居場所がわかってくる
- 社会の変化の中で、他者との対話を通して自分の確固たるアイデンティティを確立する
ステップ③の実践ポイント:
- ①で描いた未来と自分の在り方を照らし合わせ、今すぐできなくても他者と共創しながら実践に向けた姿勢をもっておくこと(姿勢があれば成長できる)
- 1回行動してうまくいくことはほとんどない。継続して実践を重ねること
- うまくいかなかったときもプラスに転換して現在地をアップデートしていくこと
トミーさんは「先が見えない時代だからこそ、未来は自分でつくっていける。他者や社会との対話を通して描いたことを実践しながら自分のものにしていく手応え感覚が一番大事。」と参加者にエールを送っていました。次に、実践例としてKyoto Living Lab Projectの紹介が続きます。
well-beingな社会に向けてトミーさんがmy turnメンバーとともに2025年に実現を目指している「エシカルタウン京都」のマーケティングデザインでは、京都市という単位では大きすぎることから、各11区でwell-beingな地域を創っていくことを京都市に提案した2019年の春を起点に、実際にどのように活動してきたかが表されています。Living Labは地域を舞台にまちの主役である住民が主体となって、暮らしを豊かにするためのサービスやモノを生み出したり、より良いものにしていく活動のことを言いますが、実際にmy turn塾に参加したメンバーは北区や南区、移住先の安城市(愛知県)でもLiving Labを始めていきました。
さらに、トミーさんが長年活動してきた大津市(滋賀県)では、市民のみならず企業や行政、金融機関、大学など多様なメンバーが関わるOtsu Living Labを立ち上げ、新たに昨年設立した会社(株式会社ホモ・サピエンス)と両輪で京都市のコミュニティとも相乗効果を出すような活動をしていくとのこと。
※トミーさんにインタビューし、株式会社ホモ・サピエンスについて筆者がまとめた京都市SILKのコラムはこちら
https://social-innovation.kyoto.jp/spread/5788
ここで、Otsu Living Labがコミュニティを越境して活動し始めている点について筆者からも、「オープンイノベーション」のあり方がどのように変遷してきているか紹介しました。トミーさんが図にまとめているように、元々は企業間の連携・協働として進められてきた
「オープンイノベーション(以下、O.I.)」ですが、より多様なステークホルダーと社会課題を解決するような(まさにLiving Labがその代表例の)「O.I.2.0」に発展。
近年は、まちづくりにおいて特定のエリア開発を大企業が主導しながら複数社と協働する事例に見られる「O.I.3.0」も創出されていますが、今後は散在するコミュニティメンバーが、所属するコミュニティを越えて共感をベースに連携していく「O.I.4.0」の時代です。そこでは、トミーさんが「バウンダリースパナー(越境人材)」と定義する、複数のコミュニティをつなぎ、協働を促進させる人材が鍵になります。
バウンダリースパナー(越境人材)
①複数のコミュニティをデザインし、境界を越えて、組織/個人をつないでいく
②(オリジナルの定義)個人の育成やサポート、メンバー間のナレッジ(知識/情報/知見)
の共有によってプロジェクトや活動を促進させる。
実現したい未来を描き実践していくための「マーケティングデザイン」の考え方と実践例から、一人ひとりの働く「人」が中心となる越境コミュニティとしての「O.I.4.0」まで理解を深めてきましたが、最後はトミーさんと参加者との質疑応答で締め括られました。
質疑応答
Q.自分のpurpose(あり方)を軸に仲間を探そうとするとき、①相手から見つけてもらう方法と②自分から相手を見つける方法があると思いますが、この人とつながりたい、という場合には、どのような活動をされていますか?
トミーさん:営業ではなく、自分のしたいことを伝えるプレゼンテーションをしています。「この人に伝えたい」と思う10人に伝えたら、その10人の中で反応してくれる人が仲間になっていきますが、大事なのはいかにアイデンティティを確立するかという点です。
自分が何者かを確立して発信すると、同じ思いや未来を描いている人から共感を得られるからです。仮に「well-being」のように漠然としたテーマであっても、実践しながら体系化することで、さらに伝わりやすい見せ方ができていきます。
Q.「越境人材」として、自腹で活動を続ける形ではなく、ちゃんと仕事にしていくには、どうしたらいいのかというのが最近の悩みです。
トミーさん:まずはその悩みも含めて一緒に活動している仲間に思いを伝えること。一番何がしたいのか、どんな世界をつくりたいか、その中での自分の役割を自問しながら自分にとっての幸せな形を突き詰めて、周りにプロセスシェアをしていくことが大事です。
私の場合は、時にお金を生まないことも楽しみながら進んでやっています。どこからが仕事でどこまでが遊びなのか、実は仕事という概念をもたずに先義後利のマインドで活動しているのが実態です。きちんとお金をいただけるようになるには、多くの人と会って対話して自分のオリジナリティを更新しながら価値になるまで高めていくことではないでしょうか。
Q.描いたことを実践することはできても、それを検証するのが苦手です。その方法を知りたいです。
トミーさん:社会に対する違和感などから自分の中で問いを立てて、実践したことと答え合わせをすることです。定点観測的に自分がベンチマークしている人や社会の動きと答え合わせをすることもあれば、同世代だけでなく幅広い世代と話す中でも気づきを得て、方向はこっちだなと答え合わせできることもあります。
質疑応答後も、いつもながら参加者同士の立ち話で盛り上がった回でした。いよいよ次回は最終回。my turn代表理事の杉原さんをゲストに、自分を活かせる生態系を描き、語り合う交流会を開催します。最終回まで、どうぞお楽しみに!