IDEA

まちのランドリエ

中京区小学校図書館ボランティアネットワーク
柴田 歩
2007年夫の転職を機に、当時8歳5歳2歳の3人の子どもと京都に移住。 右も左もわからない状態で子どもが通う小学校学校図書ボランティア活動を始める。2013年から中京区役所発行のまちづくり特化フリーペーパーの制作に区民ボランティアとして参加。まちを個人 レベルで良くしようと思い行動する様々な人と出会い自分でも何かできることはないかと探し始める。2016年子どもの読書推進活動と子どもと本の間に立つ人を応援するため「中京区小学校図書 館ボランティアネットワーク」を立ち上げ図書ボラン ティアの横のつながりづくりをしている。絵本をまんなかに人と人がつながれるまちづくりを目指して活動中。

──現在考えられているアイデアとその目的はどのようなものでしょうか?

ビジネスのタイトルは「まちのランドリエ」です。コインランドリーを舞台に、地域住民の「困り事」と「役に立ちたい事」をつなげ、暮らしやすさと生きがいが生まれる場づくりをコインランドリーという既存の商業施設を利用して創出します。子育て世代や高齢者など孤独に陥りがちな方が社会的つながりを維持できる地域のハブにもなり、地域の人と一緒に安心して暮らせるまちづくりを目指します。

 

──具体的にはどのようなことを計画されているのでしょうか?

コインランドリーにカフェスペース(絵本·本のあるコミュニティスペース)を作ることでそこに集まる「育児」や「家事」で困っている方と「子どものお世話」や「家事代行」など社会貢献をしたい方が出会える仕組みになっています。

例えば、コインランドリーに、親に連れられて子どもが一緒にやってきます。店主(ホスト·繋ぎ手)の案内でそこにいる近所の人と交流が始まり、そこにいる近所のおばちゃんが絵本を読んでくれたり、おっちゃんが将棋を教えてくれたり。少し子育てから手を離してリラックスしてもらいます。家事に困っているお母さんがいれば、代わりにアイロンがけをしてあげる人がいたり、コインランドリーが「まちの家事室」になりカフェは大きな「まちのリビングルーム」になります。

ご近所での小さな出会いを繰り返すことで知り合いが増え、ここに来れば社会とのつながりを感じられると思えるような店舗運営をします。

 

──アイデアの特徴を3つ上げるとしたら、どんなところでしょうか?

1つ目は、「コインランドリー×カフェ」 情報不足と孤独がなくなる場。一般的に無人営業のコインランドリーですが、まちのランドリエは、まるでおしゃれなカフェのような空間で店主がいます。洗濯機の仕上がりをお茶を楽しみながらゆったり待ったり、あなたに必要な地域の情報をゲットできます。昔の主婦の情報交換が洗濯をしながらの井戸端会議出会ったように、古くて新しい地域とのつながり方をご提案します。

2つ目は、「コインランドリー×まちの居場所」出会いが生まれるサードプレイス。なにかと手狭なまちなか暮らしで、やってみたいことは多いけど部屋が狭いしお隣も気になりませんか。「まちのランドリエ」は自分の好きなことができるサードプレイスであり、もうひとつのリビングルーム。ミシンやアイロンがけができる大きな作業台があるまちのランドリエでは、おうちの家事が捗るだけでなく、趣味を披露したり居合わせた人と手仕事をしながらお喋りすることで距離が縮まります。

3つ目は、「コインランドリー×社会福祉」生きがいに出会える場。高齢者の方がどんなときに生きがいを感じるかという調査の第1位は、「社会貢献ができること」だそうです。でも、いきなり既存のボランティア団体に参加するのはちょっと不安という方のために、地域のボランティア活動の情報から、繋がりが生まれる体験会、ワークショップを開催するなど、誰でも参加できるよう企画を実施します。そんなに身構えなくても、お店に来て出会ったお子さんとお喋りしたり絵本を読んだり、時間があれば一緒にゲームをしたりして遊んでみるだけで、まちなかで孤独に子育てしている世代にとっては助かることもあるのです。そうして小さな社会貢献を積み重ねてもらうことで生きがいを感じてもらえるようになればと思っています。

 

──なぜこのビジネスアイデアを実現したいと思うようになったのでしょうか?

私がこのまちの人と一緒に笑顔で歳を取りたいと思い、自分には何ができるだろうと考えていたとき、一つのお店がまちの風景を変える事例「喫茶ランドリー」を知ったことがきっかけです。コインランドリーというまちなかにある既存の施設が地域に開かれ、つながりを創出する場になれば、面白いことができるのではと考えるようになりました。

3人の子育て中に、地域の小学校で子どもと本をつなぐ活動や区役所のフリーペーパー作成の区民スタッフとして参加したことがきっかけで、様々な社会貢献のカタチに出会いました。今は絵本をコミュニケーションツールとして出会いの場を作っています。

私なりに考えた「社会的孤立を防ぐために、今できること」はどんな小さなことも社会貢献につなげられる仕組みや場を作りそこに集まった人を応援することだと思っています。

 

──なぜこのビジネスが今必要だと考えているのですか?

3年前に自分の母が実家で孤独死をしたのがきっかけで社会的孤立について深く考えるようになりました。みんなえ笑顔で歳を取りたいと思うからこそ、そうなる前に孤立する人を生み出さない仕組みに出会うことが必要です。気軽に相談できる場所や支援に繋がる場、社会に貢献できる場、出会いが生まれる場がもっと身近にあればいいなと思ったとき、無人のコインランドリーのスペースを見て支援がビジネスと並走できると考えました。

 

──アクセラレータープログラムに参加した時点での課題意識と、参加した上での成果はどのようなものだったでしょうか?

はじめてKOINを訪れた時、私が提案したものは、ビジネスアイデアとも呼べない、ただの妄想でした。課題意識は多々あれど、それらをどう集約し、また解決への道筋をみつけられるのか。自分一人で、もやもやした思考をぐるぐるするばかり。参加してみると、自分のビジネスアイデアを発表し合う場面で、同じテーブルで一緒になった他の参加者の方に共感してもらえるだけでなく、メンターの方々とのトークセッションを重ねるうちに、叶えたい方向がはっきり見えるようになりました。メンターセッションでは、自分の心の中にあった様々な想いを引き出していただき、何度も驚きました。自分の想いを人に伝えられるカタチにするための過程を学ぶことができました。

 

──アイデアの実現に向けて、これからの展望をお聞かせください。

「まちのランドリエはおうえんランドリー」

昔ながらの町内会が廃れ、子ども会やPTA活動も衰退しています。核家族や独居者が多いまちなかで、地域住民同士の交流と日々の暮らしを応援するために何ができるのか、これからも模索し続けます。コインランドリーのオーナー様で、ビジネスモデルとして成立するか、実験させてくださる方と繋がりたいと思っています。

また、自宅で「まちのランドリエ」を開業したいと考えていますがコインランドリー設備の開業資金調達が現在の課題です。小さな地域で小さなコミュニティでしかできない社会課題へのアプローチがあり、誰にでもできる社会貢献を、地域の人と共に創っていける場をつくりたいと思っています。

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