働く場の役割や人の繋がり方はもっと多様に変化する 3/18開催イベントレポート
2021年度に3回にわたり開催してきた「コロナ禍の今、“場”の役割を問い直す」。vol.1「コミュニティマネージャーが考える 仕事場のその先」、vol.2「#仕事場のその先 にあるコワーキングの可能性」とコワーキングスペース(以下、コワーキング)の関係者とともにトークセッションを行い、コロナ禍における働き方や働く場の在り方を追求してきた。
最終回のテーマは 「はたして #仕事場のその先 はあるのか?ないのか?」。今回は、株式会社ツナグムのタナカユウヤさんとともに、「ONOMICHI SHARE」の後藤 峻さんを進行役に迎え、ゲスト、参加者とともにテーマを深掘りしていく時間となった。
写真上:タナカユウヤさん、写真下:後藤 峻さん
vol.1には、ゲストスピーカーとして登壇していただいた後藤さん。結婚を機に広島県尾道市に移住し、倉庫を改装して作られた「ONOMICHI SHARE」でコンシェルジュを担っている。移住者、地元のクリエイターなど場に訪れる人をつなぎ、その人が求めていたものを尾道の中でうまく叶えれるように場づくり、人と人の関係性の創出に取り組んでいる。
コロナ禍で、他県から尾道に人が訪れにくいときも、尾道の個性ある人を紹介するライブ配信や、県内のコワーキングをオンラインでつなぎ、関係性づくりを行うなど、地域や場を超えた人のつながりをつくる活動も継続的に行ってきた。
▲海が見える、ONOMICHI SHARの会議室。
今回後藤さん、タナカさんとともに場を盛り上げてくれたのは、東京を拠点に、フリーランスとして地域や企業のコミュニティづくりや関係人口の企画づくりなどを行う吉田めぐみさん。前職は東京都内でコミュニティマネージャーとして、コワーキングスペース「co-ba」の拠点運営に携わっていた。
吉田さんはコミュニティマネージャーとしてどんなことを心掛けていたのか、どんな場づくりを行っていたのだろうか。
吉田:一番注力していたのが、利用者さんに対してのアプローチですね。入る前の段階の面談では、どんな仕事をしていて何にチャレンジしていきたいかを、ヒアリングします。入った後にチャレンジをどのように応援していくかを考え、関係する人や機関との接点づくりや、スタートアップ支援などを行っていました。
自分たちのコミュニティ内で足りない場合は、外部と繋がるイベントを企画することも。運営スタッフも少なかったため、集客、経理、スタッフ育成など場に関わることは何でも行う、コミュニティマネージャーだったそう。さらにコミュニティ内のつながりをつくるだけでなく、他のコワーキングとの関係性づくりにも精力的に取り組んだ。
吉田:1人で運営を担うことも多かったので、横の繋がり作りたいとコミュニティマネージャーが集えるイベントを企画したり、自分の運営するコミュニティ、友人、関係者などが交わったらどうなるのか実証実験がしたくて『スナックぐみ』というイベントの開催などを行いました。
また自分にフィットした生き方、働き方を模索しようと、コミュニティマネージャーとして会社に務める傍ら、長野県の塩尻市の関係人口創出のプロジェクトに応募し、副業人材として登用された。
吉田:会社員は、会社だから得られる資金や人脈の恩恵を受けて仕事ができるし、個人は縛りがないからこそ、予想を超えるつながりができる。それぞれに良い部分があって、どちらにもいい影響を与えられることがすごい面白かったんですよね。
会社員とフリーランスどちらの良さも理解したうえで、2021年からはあえて肩書きのない状態で自分らしくチャレンジしてみようと、フリーランスの道を選んだ吉田さん。現在は旅人コミュニティの立ち上げ、都市のスタートアップと地方自治体をつなぐイベントの実施など、これまでの経験や自分の関心をもとに幅広い領域で活躍している。
吉田さんはコミュニティマネージャーとしてどんなことを心掛けていたのか、どんな場づくりを行っていたのだろうか。
吉田:一番注力していたのが、利用者さんに対してのアプローチですね。入る前の段階の面談では、どんな仕事をしていて何にチャレンジしていきたいかを、ヒアリングします。入った後にチャレンジをどのように応援していくかを考え、関係する人や機関との接点づくりや、スタートアップ支援などを行っていました。
自分たちのコミュニティをより加速させるために、外部と繋がるイベントを企画することも。少数精鋭だったため、集客、経理、スタッフ育成など場に関わることは何でも行う、コミュニティマネージャーだったそう。さらにコミュニティ内のつながりをつくるだけでなく、他のコワーキングとの関係性づくりにも精力的に取り組んだ。
吉田:1人で運営を担うことも多かったので、横の繋がり作りたいとライフワークとしてコミュニティマネージャーが集えるイベントを企画したり、自分を取り巻く様々なコミュニティの友人や関係者などが交わったらどうなるのか実証実験がしたくて『スナックグミ』というイベントの開催などを行いました。
また自分にフィットした生き方、働き方を模索しようと、コミュニティマネージャーとして会社に務める傍ら、長野県塩尻市の関係人口創出プロジェクトに応募し、副業人材として登用された。
吉田:会社員は、会社だから得られる資金や人脈の恩恵を受けて仕事ができるし、個人は縛りがないからこそ、予想を超えるつながりができる。それぞれに良い部分があって、どちらにもいい影響を与えられることがすごい面白かったんですよね。
会社員とフリーランスどちらの良さも理解したうえで、2021年からはあえて肩書きのない状態で自分らしくチャレンジしてみようと、フリーランスの道を選んだ吉田さん。現在は旅人コミュニティの立ち上げ、都市のスタートアップと地方自治体をつなぐイベントの実施など、これまでの経験や自分の関心をもとに幅広い領域で活躍している。
時代とともに移り変わる「働く場」
後藤:さまざまな場所でWi-Fiが利用できるようになり、リモートワークを認める企業も増えて、働く場も働き方も変化してきましたよね。従来通りデスクワークに集中したい人もいる一方で、働く場に人との出会いやコミュニティを求める人も増えてきてるのかなと感じています。吉田さんは、何か変化を感じてることはありますか?
吉田:私がコミュニティマネージャーを始めた時は、「コワーキングスペース」という言葉も浸透しておらず、利用者はスタートアップやフリーランスのクリエイターが中心でした。最近は会社員の人も増えてきて、会社員をターゲットにしているスペースが増えた印象です。
後藤:どんな理由から、会社員の方もコワーキングを使うようになったのでしょうか。
吉田:以前は副業している方や、フリーランスとして独立を目指す方が主に利用していたんですが、コロナ以降は、家でリモートワークができないから利用したいという人が増えました。
後藤:そういう方は、人やコミュニティとつながりを持ちたいという思いもあって、利用されているんですか?
吉田:その気持ちもありつつ、主に仕事場として選択する人が多くなったような印象があります。独立を目指す人は、先輩フリーランスや経営者がどのような動きをしてるのかとか、何を自分が学んだらいいのか知りたい、人脈をつくりたいという意欲が高い人が多かったんですが。一方で、大企業の新規事業の部署などがコワーキングをオフィスとして利用するケースも増え、スタートアップやフリーランスからすると、大企業とつながれる貴重な場になっているのかもしれません。
後藤:チャットでもどんどん意見が上がっていますね。「会社単位で契約しているため、社員が利用している」「利用者の中には、UIターンで帰ってきた人も」。なるほど、さまざまな理由があって利用されているんですね。
持続可能な場を目指して
続いては、都市部と地方のコワーキングの違いから、コワーキングと利用者のミスマッチについて話が広がった。イベントには全国各地からさまざまな立場の人が参加していたため、地域や規模、利用者などそれぞれの環境にマッチするコワーキングの在り方について考えを聞くことができた。
後藤:吉田さんから見て、都市部と地方のコワーキングの違いは、どんなところにあると思いますか?
吉田:都市部は数も多いし多種多様な場があるけれど、地方は数がすごい多いわけじゃないから、幅広い層を受け入れて、地域にどう根づかせるかを重視しているような印象を受けますね。
後藤:まさに尾道では「地域にどう根づかせるか」を考えて場をつくる方が、機能すると感じています。でももっと小さな地域では、「根づかせる」というより、地域の人たちが集まるための拠点としての役割を持たせた方がフィットすると思うんです。けれど、とりあえず「コワーキング」をつくることを目的にしている場も増えている気がしていて。
タナカ:都心と同じようにスタートアップが働く仕組みを地域のコワーキングに備えても、あまり意味をなさないですよね。まちの人が集う集会所や地域企業の集う商工会議所的な場、学生たちの学び場だったり、それぞれの地域ごとにコワーキングスペースが担う役割は違う。そのまちにどんな人がいて、どこを目指すかっていうのを考えながら作らないと、持続可能な場にはならないんじゃないかな。
吉田:すごく共感します。ここ数年でコワーキングのような働く場が増えてきて、中には「なんか気持ち悪いな」って違和感を感じる場所があります。それは空間のデザインやスタッフの良し悪しじゃなくて、掲げているコンセプトと、やってることがかみ合わないときに、気持ち悪さを感じるんです。「人を繋ぐ場です」って言ってるのに、誰も話そうとしないとか。でもそれが「静かで集中できる場所です」と掲げている場なら、気持ちいいんですよ。働く場の設計ができてないと思う場が結構多くて。
▲チャットでのコミュニケーションも常に盛り上がっていた
タナカ:場と利用者がミスマッチしている状況もありますよね。「自分は働く場に何を求めるのか」を知るためにも、運営者も利用者もいろんな在り方を模索してほしい。そういう観点でも、吉田さんが前職で取り組んでいた、面談はとてもいいですよね。
後藤:面談で「合わない」と思った場合はどうするんですか?
吉田:うちと合わないと思う理由をお伝えして、その方にフィットすると思うコワーキングを紹介していました。普段から場を超えてコミュニティマネージャー同士がつながっているからこそ、互いのコワーキングの特徴や雰囲気も理解できていた。だから安心して紹介できるんです。きちんとその方にあった場を紹介したことで、イベントで来てくれたり、面談が終わった後もいい関係でいれるんです。
後藤:とはいえ、やっぱりうちに入ってほしいと思ってしまいますよね……。
吉田:そうすると、きっと互いに不幸なマッチングになってしまうと思うんです。入っても不満がでてきてしまったり、今いる人たちの居心地が悪くなったり。ですから、きちんと場にマッチした人たちが心地よくいられることを、大事にしたいと思っていて。そうすると、自然に信頼のおける人を紹介してくれたり、利用者さんが場を紹介する役割を担ってくれることもあるんです。
吉田:コーキングって「場」ですけど、人が場をつくっているし、場が人を育む、その両方があるんですよね。タナカさんや後藤さんがいるところに仕事の話が集まってくるように、場所でなくても人に情報が集まってくることもあると思うんです。
タナカ:紹介し合えるような関係性の人が増えれば増えるほど、人生も生きやすくなる。仕事場の話から、そのぐらい大きなことにもつながる気がするんですよね。信頼のある人たちが集まる場になってくると、その場所自体がそれぞれのホームになっていくだろうし、その中で「仕事も一緒にやろう」とか「相談してみよう」とかも起こるんだろうなと思っていて。そんな場所がまちにあれば、地域自体も面白くなるんじゃないでしょうか。
▲各チームでディスカッションする時間も設けた
働き方や働く場は、さらに多様になる
イベントではこの後、2つのルームに分かれてそれぞれの持つ疑問や感想を述べ合った。「人ではなく場に魅力を持たせるにはどうすればいいのか」などコワーキングの運営者の悩みを話し合ったり、それぞれが気に入っているコワーキングの特徴を伝え合ったりするなど、短い時間の中でも意義のある時間を過ごせたようだ。
最後にタナカさんは3回のイベントをこう振り返った。
タナカ「場の役割を問い直す、ということをテーマにしながら3回のイベントをやってきたんですが、まずは自分がどうありたいかを問うことが大切なような気がしています。そこを自分に問いながら、自分にフィットする働く場や働き方を模索していけたらいいんじゃないでしょうか」
ようやく4度目の緊急事態宣言を終えた今、働き方や働く場はさらに変化していくのかもしれない。あなたはどのように働くことを望むだろうか。ぜひその答えを探すべく、さまざまな仕事や考えをもつ人と出会える場にまずは足を運んで欲しい。
執筆・写真:三上由香利
企画・編集:株式会社ツナグム